2019 Fiscal Year Research-status Report
分散形態論を用いた日本語軽動詞を伴う交替現象の統合的研究
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19K13185
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
秋本 隆之 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 助教 (70824845)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 軽動詞 / 形容詞 / 分散形態論 / 自他交替 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語動詞領域を構成する統語・形態・意味的役割および相互作用を解明することを目的としており、具体的には 生成文法の一形態である分散形態論の枠組みを用いて日本語の「XP+軽動詞」の形式をもつ諸現象を「交替」の観点から包括的に記述・説明することによって、日本語ならびに自然言語一般の動詞研究に新たな知見を提供することを目指している。 2019年度は、「XP+軽動詞」の形式のなかでも「形容詞句+スル・ナル」(例:暖かくする・なる)の形態統語的特性の解明を進めきたが、そもそもの「形容詞句」の構造についてはNishiyama (1999)の研究以来、大きな発展は遂げていないため、まず形容詞やいわゆる形容動詞に接続する「ク」「ニ」「デ」(例:暖かく、真っ赤に、真っ赤で)の具現環境を分散形態論の枠組みから分析を行った。Nishiyama (1999)ではこれらの形態素はPredという主要部の異形態であると提案されてきたが、本研究では「通時的な変遷」やをもとに「ク」と「ニ」に関しては一つの主要部の異形態だが、「デ」は別の主要部に具現する形態素であることを提案し、二つの学会で発表した。本研究は近年Matushansky (2018, 2019)で言われているPredという主要部の理論的実在性について、日本語という観点からの必要性を改めて提示することができる。 今後は研究の根幹をなす問題である「XP+軽動詞」の「交替」に関して分析の開発を進めていく。たとえば、「値上げする」「値上がりする」などの場合は軽動詞の前の「XP部分」で「自他の交替」が起こっているのに対し、「暖かくする・暖かくなる」の場合は「軽動詞部分」で「自他の交替」が起こっている。この問題に対しては形態構造上のアクセス領域(Accessibility Domain: Moskal 2015)の違いから説明が可能であるという仮説を立て、研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、2019年度は「XP+軽動詞」の「自他交替」システムの解明を行う予定であったが、「形容詞句」の構造研究が先決でであることが判明したため、主にその研究に費やした。2019年度後半からは「自他交替」システムの解明に移行しており、2020年度で通常の進度に戻る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、「値上げ、値上がり」のような複合語に対し、ラベリング理論から分析の開発を進めるとともに、Moskal(2015)で提案されているアクセス領域(Accessibility Domain)仮説を用いることで「XP+軽動詞」の「自他交替」システムの解明を目指していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由としては、3月8~9日に開催予定であった東北大学言語変化・変異研究ユニット第6回ワークショップに参加予定であったものが、コロナウイルスの感染拡大の影響を受け中止になったことに起因する。現在、このワークショップは秋ごろに開催を延期しているが、開催された場合は参加するための旅費に企てる予定である。
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Research Products
(3 results)