2020 Fiscal Year Research-status Report
分散形態論を用いた日本語軽動詞を伴う交替現象の統合的研究
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19K13185
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
秋本 隆之 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 助教 (70824845)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 軽動詞 / 動名詞 / 複合語 / ラベリング / 自他交替 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語動詞領域を構成する統語・形態・意味的役割および相互作用を解明することを目的としており、具体的には 生成文法の一形態である分散形態論の枠組みを用いて日本語の「XP+軽動詞」の形式をもつ諸現象を「交替」の観点から包括的に記述・説明することによって、日本語ならびに自然言語一般の動詞研究に新たな知見を提供することを目指している。 2020年度は、「手洗い」のような動詞由来複合語に焦点を当てた。これらは、英語のhand-washのような複合語と異なり、直接時制辞を伴うことができず、軽動詞「ス(ル)」の介在が必要となる(例:My mother hand-washed all the laundry./母が 洗濯物をすべて 手洗い した。(cf. *手洗った))。動詞由来複合語の分類や内部構造については多くの研究があるが、なぜ日本語の場合は、直接、後続要素を取れず、軽動詞スルが介在しなければならないのかについてはそれほど積極的な議論はされてこなかった。 本年度はこの点について現象を整理し、複合語の内部構造および軽動詞スルの具現条件の解明を目指した。具体的には、範疇未指定主要部H[Cat:_](Song 2020)を援用し、さらにChomsky (2013, 2015)以降、生成文法の研究課題となっているラベリング理論に基づき、(a)動詞由来複合語をはじめとする動名詞の派生には、範疇未指定主要部H[Cat:_]が関わっており、それがVoice主要部への移動を不可能にしている、(b)軽動詞スルは、Voiceが語根と局所的関係にない場合に具現する形態である、という本研究課題の骨格とも言える新たな仮説を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況で「やや遅れている」と判断したのは、2020年度はコロナ禍で授業運営・準備に当初の想定以上に時間がかかったこと、そして、それに伴い、本務校での学内業務の負担が増え、研究以外のエフォートの割合が大きくなったことが挙げられる。特に、9月頃までは研究課題を進めるための時間がほとんど取ることができなかった。本研究課題の分野では特に4-9月の期間の研究成果でもって学会発表を行うことになるため、2020年度は研究発表の機会に恵まれなかった。しかし、9月末以降からは当初の予定どおりに研究課題に取り組むことが出来、本研究課題の骨格を担う新たな仮説を開発することが出来た。しかし、まだ順調とまでは行かないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績に記したように、(a)動詞由来複合語をはじめとする動名詞の派生には、範疇未指定主要部H[Cat:_]が関わっており、それがVoice主要部への移動を不可能にしている、(b)軽動詞スルは、Voiceが語根と局所的関係にない場合に具現する形態である、という本研究課題の骨格とも言える新たな仮説が開発されたので、今後はスル・ナルの交替のような関連現象に裾野を広げていくこととなる。本仮説は、スル・ナルの交替も取り扱うことができる包括的なものとなっているため、今後は先行研究での言語事実を整理しながら、本仮説を発展し、学会発表・論文執筆が行える予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、年4~5回ほどの、国内外の学会参加を見込み、助成金の申請をしていたが、コロナの影響で学会がキャンセルまたはzoomなどのビデオ会議になったことで、旅費および資料印刷用のトナー代のための使用がなかったため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した時点では、多くの学会が会場にて開催する旨を発表していたが、コロナの収束が見込めず現時点ではオンライン開催とする学会も多いため、そのような場合には残額を返金させていただきたい所存である。しかし、オンラインでの参加のための設備や本学の図書館にはない研究書の購入は継続し、研究の進展につなげていく。
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