2021 Fiscal Year Research-status Report
格の省略がもたらす意味解釈への効果に関する理論研究
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19K13188
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
杉村 美奈 立命館大学, 文学部, 准教授 (20707286)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格 / 複雑述語形成 / 動詞複合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は格がもたらす意味解釈への影響および格の文法的役割を明らかにすることを目的とし、同時に格の付与に密接に関連する複雑述語形成の仕組みを捉え直すことも研究課題としている。 2021年度は、2020年度に行った宮本陽一氏(大阪大学)との共同研究の成果を、English Linguistic Society of Japan International Spring Forum 2021にて発表した。同発表では、日本語の再構築構文 (Miyagawa 1987) における「が」格目的語を、(1)焦点化移動 (focus movement) 、(2)可能述語「られ」のFocus主要部 (focus head) への主要部移動によって捉える分析を提示した(詳細については、2020年度実施状況報告書を参照されたい)。同発表に対し、他の研究者からは意味論的観点から当該分析を示唆する言語事実の提示や、「られ」のFocus主要部への移動の性質についての明示化を求める質問など、有益なフィードバックを得た。 一方、小畑美貴氏(法政大学)との共同研究の成果として、日本語の再構築構文に一見類似するにも関わらず形態・統語的に異なる性質をもつ英語のgo get構文 (e.g. go get a book) に関し、動詞複合を外的併合 (External Set Merge) によって形成する分析を日本英語学会第39回大会シンポジウムにて発表した。また、同発表にて、同構文に類似する例として日本語の「乗り降り(する)」タイプの動詞複合をとりあげ、go get構文の分析を発展させた。他の研究者からは、動詞複合の形成と意味的主要部との関連性や動詞複合の選択する項および格助詞との関連性について等、重要な示唆を含む質問や指摘を受けた。 また、複雑述語の形成をめぐる関連文献の調査、書評も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、日本語の再構築現象における「が」格認可のメカニズムおよび複雑述語形成をめぐる現象記述研究に対する理論構築を、日本語と英語の比較研究を通して行った。この点においては、本研究課題は順調に遂行されていると言える。しかし、第38回日本英語学会シンポジウムでの小畑美貴氏との共同研究発表は、新型コロナウイルス感染拡大防止により、2020年度から2021年度に延期になったことから、研究成果発表の場で得たフィードバックをもとに理論を精密化する時間が十分に取れていない。したがって、当初の計画にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の宮本陽一氏との研究成果発表で得たフィードバックをもとに、日本語の再構築構文における複雑述語形成と「が」格目的語認可との関連性に関する理論の精密化を図り、論文にまとめたものを国際誌に投稿する予定である。同時に、再構築構文に表面上は類似するgo get構文と日本語の「乗り降り(する)」タイプの複合動詞に関する小畑美貴氏との共同研究の成果も論文にまとめ、国際誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究発表および学会・研究会等への参加がすべて新型コロナ感染拡大防止によりオンライン開催になったことから、当初予定していた旅費が未使用となった。未使用分は関連図書や備品の購入等に使用したが、使用しきれていない。2022年度は未使用分を図書や備品の購入、論文校正への謝礼、新型コロナの状況をみて、可能な範囲での出張費に使用する予定である。
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