2021 Fiscal Year Annual Research Report
On the development of Chinese modals into connectives and discourse markers: Constructionist and typological perspectives
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19K13191
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
朱 冰 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (30827209)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国語 / ポストモーダル / 接続詞 / 談話標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、これまでの分析結果を総合的に考察し、モダリティが複文(節連結)・談話の領域への拡張について次のような理論的示唆を得た。 (1)中国語のモダリティ表現は、力動的・束縛的・認識的意味といった典型的なモーダル的意味のほか、多種多様な機能を持っており、テキスト・談話領域のような多様な機能領域へ拡張しており、ポストモーダルの発達における多様性と複雑性を示している。 (2)本研究で取り上げられたモダリティ表現の接続詞化と談話標識化という現象は、Narrog (2012) が提案する意味変化における普遍的な方向性にうまく適合していると考えられる。つまり、モダリティにおける意味変化は、モダリティの文法化の後期段階において基本的に談話・テキスト自体にリンクする意味機能の発達方向に進んでいる。特に、中国語の禁止表現や日本語の命令表現といった間主観性が顕著に表れている表現から接続詞への拡張変化は、「非主観的意味>主観的意味>間主観的意味」という(間)主観化の一方向性仮説 (Traugott 1995, 2003, 2010) によってうまく説明できないことから、テキスト機能の発達を独立した拡張方向であると見なすNarrog (2012) の妥当性が改めて確認された。 (3)日本語との対照を通じて、ポストモーダルへの拡張は、当該言語のモダリティ表現の固有性質に大きく左右されるのではないかと推測できる。例えば、中国語の法助動詞と比べ、迂言的な形式が多い日本語の法助動詞は、文法化の度合いが相対的に低いと考えられる。このようなモダリティ形式がさらにポストモーダルへ拡張することは、比較的制限されていると予想できる。
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