2022 Fiscal Year Research-status Report
日常対話コーパスにおける述語項構造アノテーションの作成と分析
Project/Area Number |
19K13195
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
大村 舞 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語資源開発センター, プロジェクト非常勤研究員 (20803563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーパス / 話し言葉 / Universal Dependencies |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年公開された大規模日常会話コーパス『日本語日常会話コーパス(Corpus of Everyday Japanese Conversation, CEJC)』に、文の意味表現のひとつである「述語項構造」の情報を付与した『「話し言葉」の述語項構造コーパス』のアノテーションデータの開発及び分析に取り組んでいる。従来、文の意味理解のために「述語項構造」の研究が活発に進められてきたが、これらの研究は主に「書き言葉」が主眼であった。「話し言葉」特有の言語現象を分析するために、このCEJCに述語項構造の情報を付与したコーパスを付与する方針で作業を進めてきた。そのため令和元年度から令和三年度の間に、話し言葉における述語項としてのアノテーションの仕様を定め、ベースとなる述語項構造解析ソフトウェアの開発に取り組むことにより大規模な話し言葉の述語項構造コーパスを開発する予定であった。CEJCの数サンプルを分析していくにつれ、話し言葉における述語項構造には想定以上に話し言葉特有の様々な言語現象があること、アノテーション負担が高いこと、既存の枠組みの範疇を超えた枠組みの制定が必要であることが判明した。また日常対話は話者同士の共通認識なども相まって、話し言葉中に実態を指す言葉が省略され曖昧になることが多いことが分かった。そのため、指示詞などの表現がその表現に当てはまるかという「共参照」情報も重要であると考えた。共参照情報を主軸とした日常会話コーパスアノテーション情報の提供を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではCEJCに述語項アノテーションを付与しデータを公開することを目的としていた。そのため昨年度までに、話し言葉における述語項としてのアノテーションの仕様を定め、付与する予定であった。しかしCEJCを分析していくにつれ、話し言葉における述語項構造には想定以上に話し言葉特有の様々な言語現象があることが判明し、話し言葉などとの違いを踏まえつつ検討する必要が発生した。その結果、具体的にCEJCにアノテーションの仕様を定めるにはテキストについてアノテーションを付与するだけではなく、ビデオ操作をしながらも述語項のアノテーション作業をしてもらう必要がある。述語項構造の基盤となりうる構文情報(係り受け)などは整備されているが、さらに、アノテーション仕様を適切に定めた上で、一定時間をかけて作業者を訓練する必要があるため、人材を確保しつつ分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度において検討していた工程の一部を回すことにする。次年度中にアノテーション作業をさらに進めることにする。話し言葉の事例を確認しながらも、述語項構造において「項」を表す「共参照」という事象にアノテーションを付与することを主軸にアノテーション作業に取り組む。さらに、述語項のアノテーション作業者の人材確保及びアノテーション訓練を十分に行うものとして、アノテーション方針についてまとめたものを成果物および研究発表として出すことを検討している。実装自体は既存のツールを用いれば実現可能だが、話し言葉の現象を調査するにはやはり実用的なアノテーションが必要である。そのため、アノテーション仕様を求めて、実際にデータを公開することを主眼とする方針にしている。いくつかのサンプル自体はCEJCの本公開により可能となった。述語項構造の基盤となりうる構文情報(係り受け)については整備されつつあるので、それに合わせてアノテーションをしてもらう計画である。
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Causes of Carryover |
いくらか旅費として学会発表のための予算を確保していたが、論文が採用されなかったため使わなくなった。また当初考えていた人材の確保が遅れたため、人材費を使うことができていない。最新の研究に合わせて機材は購入したものの、人材に割り当てることができなかったため、残額が発生している。次年度も使用額に関しては、最新の研究動向をリサーチするための書籍代や、述語項構造アノテーションを付与する人材への人件費や機材費用、アノテーションの打ち合わせなどの旅費に用いることを検討している。 オンラインでスムーズにやりとりをするための機材確保も必要と考えている。規制も緩和されているため、とくに旅費が多く必要と考えている。
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Research Products
(3 results)