2020 Fiscal Year Research-status Report
発話調査・聞き取り調査に基づく首都圏東部域音調の研究
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19K13203
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
林 直樹 日本大学, 経済学部, 講師 (70707869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アクセント / 首都圏東部域 / あいまいアクセント / 埼玉特殊アクセント / 音響的特徴 / 発話調査 / 聞き取り調査 / Web調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、首都圏生育者におけるアクセント型の弁別にかかわる音声的特徴を明らかにするため、合成音声を使用した聞かせる調査の分析、ならびに成果公開を行った。具体的には以下のとおりである。 本年度分析したのは、アクセント型によって意味の対立がある同音異義語のペアである。選出した同音異義語のペアは、「ハナ」(平板型「鼻」-尾高型「花」)、「アメ」(平板型「飴」-頭高型「雨」)、「ウミ」(尾高型「膿」-頭高型「海」)の3つとなる。この3ペア、計6語それぞれにおいて、下降幅・相対ピーク位置という二つの音声的特徴を段階的に操作した、30パターンの合成音声を作成した。そして、この音声を用いて、首都圏に生育した20代~60代を対象に、聞き取った音声がどのような意味かを判定してもらうWeb調査を実施した。 調査の結果、「ハナ」のペアでは、下降幅が小さいほど「鼻」、大きいほど「花」と判定された。「アメ」のペアでは、下降幅が小さいほど「飴」、下降幅が大きく、かつ相対ピーク位置の値が小さい(前寄りにピークが到達する)ほど「雨」と判定された。「ウミ」のペアでは、下降幅が小さい音声では「どちらでもない」が多いものの、下降幅が大きい場合は、相対ピーク位置が小さい(前寄りにピークが到達する)ほど「海」、相対ピーク位置が大きい(後寄りにピークが到達する)ほど「膿」と判定された。 以上の結果は、従来から指摘されていた下がり目の有無と下がり目の位置によってアクセントを弁別していることが追認されたものと捉えられるが、下がり目の位置による同音異義語の区別は下がり目の大きさにも影響を受けていることから、双方の特徴が弁別性に寄与していることも推察された。 次年度は、年齢差といった属性別の分析観点を取り入れて、より詳細に首都圏アクセントの実態を聞き取り面から明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Webを介した聞かせる調査の結果に基づく報告を行うことができたことに加えて、今後同様の手法を用いてより広域のアクセントを比較・対照する研究の準備を進めることができた。これらの点を踏まえると、研究の進捗状況はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はあいまいアクセント域(東京東北部や埼玉東部域といった首都圏東部域)において実地調査を行い、発話データを収集する予定であった。しかし、2021年4月現在の状況を踏まえると対面による実地調査を実施できない可能性が高い。そのため、Web経由で発話データの収集を行うことや、別タイプの聞き取り調査を行う計画を検討している。
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Causes of Carryover |
2020年はじめから行うことを予定していた首都圏東部域の調査や学会出張が不可能になったため、旅費にかんする予算に次年度使用額が生じた。この使用額は、2021年度の対面調査分として充当していくことを予定している。ただし、2021年度も状況が変わらない可能性があるため、これまでの知見を活かしてWeb調査を実施することも検討している。
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