2019 Fiscal Year Research-status Report
メディアの音声表現におけることばのジェンダーのイメージ
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19K13206
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
丸島 歩 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20782676)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 演技音声 / 社会言語学 / ジェンダー / 実験音声学 / 母音フォルマント / ピッチ / 文末イントネーション |
Outline of Annual Research Achievements |
条件統制した音声資料を得る前に、分析の観点を精査するため、同一の女性声優が男性役と女性役を演じる市販のドラマCDの音声の分析を行った。具体的には、大局的なピッチ動態、文末のイントネーション、母音の音色についてである。 ピッチについては、演技音声であるがゆえに全体的に高く、またレンジも大きかった。女性役音声では自然発話の女性音声に比べてかなり高くなっていた。男性役音声は自然発話の女性の音声と大局的には同程度の高さであったが、ピッチが減衰する発話末でささやき声にする箇所が多く見受けられ、実際のピッチよりも低く聞こえるような方略を使っていると考えられる。また、女性役音声では基本的にピッチレンジが広く、落ち込んでいるときや独り言など、特殊な場面でなければピッチレンジが抑制されないが、男性役音声では自分が話し手に回っている時のみピッチレンジが広くなっていた。聞き役に回ったときは女性役では驚きなどの感情表現が豊かであるが、男性役では淡々としており、会話において社会的に期待される男女の役割の違いを反映している可能性がある。 文末イントネーションは、女性役では発話内容が疑問でなくても上昇調になることが多かったが、男性役では発話内容が疑問でも平調である場合が見られた。また、男性役では自分が話し手になった際のみ文末イントネーションの種類が豊富になるが、聞き手に回った場合は平調で話されることが多かった。 母音の音色については、全体的に女性役音声で男性役に比べて第2フォルマントが高く、舌位置が前寄りで話されていると考えられる。舌を前寄りにすることで口腔内が小さく感じられる効果があると考えられる。また、男性役音声の母音 /a/ で第1フォルマントが高くなっていた。これは低い声を出そうとして喉を下げた影響であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
条件統制した分析資料を得る前に、分析の観点を精査する必要があると考え、市販のドラマCDを用いて予備的な実験を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
予備実験で得られた知見をもとに、音声資料の課題を作成する。声優等、声の演技の訓練を受けた女性数名に依頼し、男性役と女性役の音声を録音、分析する。2019年度の研究で行ったピッチの大局的な動態、文末イントネーション、母音の音色については引き続き比較を行うが、条件を統制することで新たな気づきが得られると考える。また、複数人の声優の音声を扱うことで、個人内での演技の方略と共通して見られる特徴があると考える。これらについても分析を行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
条件統制した分析資料を得る前に、分析の観点を精査する必要があると考え、2019年度は予備的な実験を行うに留まり、当初予定していた音声資料の録音と分析ができなかったため。 音声資料の録音と分析は2020年度に行い、そこで使用する。
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Research Products
(2 results)