2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13210
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
辻本 桜介 米子工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (90780990)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 引用構文 / 「言って」 / 「思って」 / 述部の伏在 / 古代語 / 述部の省略 / 訓点資料 / コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)先行研究における現代語の引用構文の分類方法について検討した。まず、藤田保幸(2000)『国語引用構文の研究』は、現代語の引用構文を、第Ⅰ類=引用句の示す発言・思考と後続する述部の示す発言・思考とが事実上一致するタイプと、第Ⅱ類=引用句の示す発言・思考と後続する述部の示す事柄が事実上同一場面で共存するタイプとに分類している。一方で、第Ⅱ類の引用構文を、引用句の直後に「言って」「思って」等の述部が伏在するものだとする文献も複数見られた。もしそのような述部が伏在しているのなら、第Ⅱ類は第Ⅰ類と同じ構造を持つということになる。しかし、どの説を見てもそうした述部の伏在を裏付ける根拠は何も示されておらず、むしろ、「言って」「思って」等の述部の伏在を想定すると説明が困難となる現象が複数存在する(引用句が発言を示すのか思考を示すのか曖昧な場合があることや、「言って」や「思って」を補うと元の意味から少し変容してしまうことなど)ことがはっきりした。引用構文において「言って」「思って」等の述部が伏在化するというような現象は想定できない。これは、古代語の引用節の分析においても参考になる事実と考えられる。 (2)解読文の公表されている平安時代初期加点の主な訓点資料をコーパス化し、漢文訓読語に特有の引用表現の調査を行った。その結果、従来存在しないと見られていた関節疑問形式の用例が豊富に得られた。また、事物の呼称を引用する表現については現代語と異なった性格を持つらしいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
担当科目の教科書内容が毎年変更となるため、他科目に比べて毎回の授業準備に時間を要しているが、本年度は特に学生寮担当としての業務の量が増え、勤務時間内においては研究時間が全くと言ってよいほど確保できなかった。また、夏季休暇中も全国高専体育大会の企画・運営など臨時の仕事が続き、年度末は転出に伴って所用が立て込んでしまった。このように一年間を通じて研究時間を確保することが難しい状況が続いたことが、進捗状況の遅れに繋がった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究環境が変わり、これまでと比べ研究時間が飛躍的に増えると見込んでいる。また、研究に必要な資料も格段に手に入りやすくなった。よって、特段の方策を練ることなく初年度の遅れを取り戻せるのではないかと考えている。遅れを取り戻しつつ、当初の計画に従った二年目の研究も実施したい。
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Research Products
(1 results)