2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K13210
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
辻本 桜介 関西学院大学, 文学部, 助教 (90780990)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中古語 / といふ / 複合辞 / 視覚動詞 / 視認内容 / 状態性述語 / 間接疑問 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)引用節「…と」と動詞「いふ」からなる中古語の複合辞「といふ」が持つ諸用法を現代語と比較しながら記述し、和文においては、被修飾名詞の表す思考内容を引用する用法が未発達であったこと、漢文訓読文では間接疑問節に相当する働きを持つ用例が少なからず得られることなどを明らかにした。(『日本語文法史研究』5所収論文) (2)中古語の視覚動詞「見る」が引用節「…と」と共起する場合、瞬間的な視認内容を引用し、一定期間継続する視覚動作による視認内容を引用するわけでないことを、準体言を承ける「…を見る」と比較しながら主張した。(『日本文芸研究』72(2)所収論文) (3)(1)と関連して、複合辞化について考察するために中古語の複合辞「により(て)」の用例を観察していたところ、それとほぼ同義に見える「ゆゑ(に)」とは異なる性質を持つことが明らかになった。(『ことばとくらし』32所収論文) (4)引用節「…と」に引かれる言葉を発した主体と、後続する述部の主体とが異なる構文の用例も収集を概ね終え、どのような構造・用法であるかを論文化した(未公刊、校正中)。 (5)形容詞等の状態性述語を持つ引用構文の用例を中古語から網羅的に収集し、5つほどの用法分類が可能であることに考え至った。これについてはまだ未公表であるが、ほぼ論文化できており、近く発表したいと考えている。 (6)引用節「…と」が間接疑問形式に相当すると思われる形で用いられる用例の収集をほぼ終えた。このことについても、間接疑問文に関する先行研究を参照しつつ、古代の引用節の一用法としての位置づけを考察し、公表したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は前任校における学生寮業務・部活動業務・新教科書での授業の準備・科目運営等々によって研究時間が極めて強く圧迫され、ほとんど研究できなかったため、大幅な遅れを取っていた。しかし2年目に当たる2020年度に入って現所属に移り、研究時間が飛躍的に増えた。これにより、完全に遅れを取り戻したとまでは言い難いものの、ほぼ期待通りのところまで巻き返すことができたように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
特段の新たな推進方策を案出する必要は無く、当初の計画に従って研究を進めることが可能と見込んでいる。すなわち、間接疑問形式に相当すると思しい引用句「…と」の用例や、引用句「…と」を「あり」等の存在動詞が受ける用例等について、検討中の内容に結論を出すことを目標とする。
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Causes of Carryover |
わずかな残額が生じたのは、ほぼ予定通りに執行できたためである。次年度の使用計画を変更するほどの額ではないと考えており、当初の計画通りに研究を推進したい。
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Research Products
(4 results)