2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13211
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
片山 久留美 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, プロジェクト非常勤研究員 (10803778)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーパス / 表記 / 近世語 / ルビ / 日本語史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、江戸時代後期に流行した戯作の一種である読本を資料とし、漢字表記とそれに対応するルビとの関係に着目して漢字かな交じりテキストとしての読本の表記の特質を捉えることを目的としてきた。日本語史研究上重要な読本作品について形態論情報を付与したコーパスの構築を行い、品詞・語種などの観点から漢字とルビとの対応関係を計量的に明らかにすることを試みた。 2023年度は最終年度として、これまで進めてきたコーパスデータの整備を行った。また、研究発表を2件行った。 1件はデータ構築過程で課題となった読本の表記上の問題を踏まえ、文字・表記研究に適したデータ構築を行う手法について検討したものである。なお、研究期間内に解決しきれなかった構築上の課題の解消を行ったうえで、今後コーパスデータの外部公開を目指す。 もう1件の発表では、構築したデータを用い、読本のルビの使用実態とその特徴について報告した。読本のデータ構築を行ったことで、読本単独の分析だけでなく、国立国語研究所が公開している『日本語歴史コーパス』所収の「江戸時代編Ⅱ人情本」のデータとの対照が容易となった。読本・人情本は同時代の戯作であり、いずれもほぼすべての漢字にルビを付す総ルビ表記によって書かれているという特徴を持つが、ルビが表す語と漢字表記が表す語の対応関係を類義度などの観点から整理すると、両者には性質の違いが見られることが指摘できた。この点については他の資料との対照も含め本研究で構築したデータを活用して研究を進め、現在執筆中の博士論文に結果を反映させる予定である。
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