2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K13225
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
籾山 陽子 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 研究員 (30789269)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近代英語 / 音変化 / 歌詞と音楽の関係 / イギリス音楽 / バロック音楽 / 16世紀の音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代英語期の英語の音楽作品の中で、17世紀の英詩を題材に18世紀に作曲された作品を採り上げ研究を進めた。作品中に17世紀の英詩を歌詞にして作曲された部分と、18世紀の作曲時に新たに作られた歌詞を用いて作曲された部分があり、その違いを検討した。その結果、17世紀の英詩についてはその発音と韻律が概ね再現されて作曲されていたが、一部手が加えられている箇所があった。17世紀の発音・韻律が踏襲されていた箇所は、古風な発音として18世紀にも容認されていたもの、即ち音変化の過程内にあるもので、発音が改められていた箇所は18世紀には古風な発音としても受け入れられなくなっていたもの、即ち18世紀には音変化が終了していたものであると考えられる。また、18世紀に新たに作詞された箇所は17世紀の英詩に基づく箇所とは明らかに異なる発音が用いられていた。この箇所は人間として理想の形を示した箇所でもあり、聴衆と同じ発音を用いることで聴衆に訴える力を強める意図が見られた。これらの考察により新たに音変化の時期についての知見が得られた。 次に、16世紀の作品を採り上げ研究を進めた。歌詞を精査することにより、16世紀半ばの作品と16世紀後半の作品とで発音が異なるものが読み取れ、音変化の状況が明らかになった。それを基に演奏会にて当時の発音を復元した歌詞の朗読や、復元した歌詞による歌唱を行い成果を発表することができた。 さらに、近代英語期の発音辞典や読み書きの指南書等から音変化の状況を読み取り、楽譜から読み取った音変化の状況と、一般の言語運用における音変化の状況とを比較した研究成果を紀要論文にまとめることができた。この研究により、発音辞典や読み書きの指南書では理想的な発音が示されていて、楽譜資料から得られた音変化の状況の方が実際の運用に見合ったものになっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バロック音楽の発音については、17世紀から18世紀にわたる音変化を楽譜から読み取ることができた。また、16世紀の音楽の発音についての検討にも着手し、音変化の読み取りが進んだ。これらから16世紀から18世紀までの音変化の状況についてのデータが得られつつある。 近代英語期の発音辞典や読み書きの指南書等から音変化の状況を読み取り、楽譜から読み取った音変化の状況と、一般の言語運用における音変化の状況とを比較した研究成果を紀要論文にまとめることができた。この研究により、発音辞典や読み書きの指南書では理想的な発音が示されていて、楽譜資料から得られた音変化の状況の方が実際の運用に見合ったものになっているが、楽譜資料の少ない時期については発音辞典等が有効な資料となることが明らかになった。 音響分析については、実際の歌唱データを収録する作業が感染症対策の関係で着手が難しく、次年度に回すことになった。 一方、研究成果の発表として17世紀と18世紀の発音が表現されている作品について次年度に演奏会を開催する運びとなり、その準備を本年度に先に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
楽譜からの情報だけでは発音を特定できないものについて、音楽のメロディーと発声の緊張・弛緩の関係を参考にして緊張が持続する母音と緩む母音を選択するために、変化の前後の発音で声楽家に歌唱してもらい、そこで得られたデータの音響分析を行う。 研究成果を広く一般の人々に発表するために、17世紀と18世紀の発音が表現されている声楽作品についての演奏会を行う。演奏会に協力してくれる声楽家の方々に当時の発音での演奏を試みてもらい、研究成果の精査を行う。 最終年度として、これまでに得られた音変化の状況を整理してまとめ、研究成果として学会等で発表する。
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Causes of Carryover |
次年度に研究成果を発表する手段として、一般の音楽ホールにて演奏会を行うことになった。その準備と当日の費用として約40万円の経費が掛かる。そのため本年度の金額を一部次年度に繰り越して使用する必要が出てきたため。 また、本年度実施予定であった音響分析について感染症対策のために次年度に行うことにしたためその費用についても本年度から次年度に移す必要があるため。
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