2019 Fiscal Year Research-status Report
普遍的な等位構造と並列構造の解明に向けた比較統辞論研究
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19K13228
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Research Institution | Aichi University of Technology |
Principal Investigator |
小林 亮一朗 愛知工科大学, 工学部, 助教 (80824143)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 等位構造 / 並列構造 / 統辞論 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、当初の計画通り「Path構文とコピュラ文の記述と統辞的分析」に注力し、等位構造とコピュラ文、そしてPath構文の比較研究を行った。その成果を学会で発表、および論文として発表した。Path構文の典型的な例は以下の通りである: (1)デモ隊が[子供から大人まで]行進していた。(Kobayashi 2019:2) (2)The range of diabetes sufferers stretches [from children to adults]. (Kobayashi 2018:76) 「AからBまで」(日本語)/“from A to B”(英語)を含むPath構文については、日本語と英語ともに統辞論の先行研究が殆ど存在しない。本研究ではまず日英語のデータを観察し、かきまぜ文や分裂文、束縛変項などの統辞テストを用いて、Path構文には二種類存在するということを論じた。その上で「分離ができないPath構文」について対象を絞って、その構造の分析を行った。 等位構造については、「非対称的な構造」(&という主辞が&Pを形成する分析)が、Johannessen (1998)他によって提案されている。これをPath構文の構造分析に援用し、&という主辞がPath構文にも存在していると主張した。具体的には、&が第一等位項としてfrom句を、第二等位項としてto句を取るという構造を提案した。この分析は、Path構文がRoss (1967)のCoordinate Structure Constraintsを一般化したGeneralized Coordinate Structure Constraintsに従うという観察によって裏付けられている。 この研究成果の一部を、GLOW in Asia XII & SICOGG XXI (Dongguk University)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、初年度は「研究実績の概要」に記述の[1]「Path構文とコピュラ文の記述と統辞的分析」に取り組むと同時に、[2]「日本語における寄生空所文の記述と統辞的分析」についても取り組む予定であった。 しかしながら、当初予定していたよりも[1]で扱う現象の範囲を拡大することになり、進捗にやや遅れが生じている。研究計画書に記載の通り、計画が予定通り進まない場合には、[1]と[3]「より一般的な構造の提案」(令和二年度に取り組む課題)に傾注し、中核となる研究課題の達成に向けた調整を行いたい。 初年度は研究成果の発表についても、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、応募予定であった学会が中止となり、影響を受けた。その分、二年目には初年度に行った研究の成果も発表できるように準備を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
[3]「より一般的な構造の提案」、つまり等位接続表現、コピュラ文、そしてPath構文に共通する構造を提案することを目指す。本研究課題に取り組む以前は、普遍的な等位構造の提案を行う計画を立て、上述の&P分析の問題を指摘してきた。しかし、より妥当な構造の提案には至ることができなかった。これは、等位接続表現のみに観察対象を絞ったことに原因があると考えている。コピュラ文とPath構文が、全域的移動(Across-the-board Movement)を許し、また(Generalized) Coordinate Structure Constraintsに従うのだとすれば、等位接続表現のより妥当な構造の分析は、これらの構文についても説明を与える必要があるだろう。初年度の研究成果を元に、それを発展させる形で「研究実績の概要」に記述の[1]の成果をより精緻化し、同時に[3]の達成を目指す。 当初予定していた二年目のアリゾナ大学への訪問は、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で難しくなってしまった。そのため、より時間を使って[1]の精緻化及び、[3]の達成に向けて研究を行うことができると考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については、年度末に参加する予定であった国内の講演会が、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によって、中止となってしまったためである。 可能であれば講演会や学会への旅費として使用したいが、引き続き、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によって多数の講演会や学会が開催延期や中止となっているため、それが難しい場合はプリンタの購入に充てたいと考えている。
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Research Products
(4 results)