2020 Fiscal Year Research-status Report
定型表現からみた医療系談話の特徴-専門日本語教育への応用に向けて-
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19K13235
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
永井 涼子 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (10598759)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 談話分析 / 日本語教育 / 医療談話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「効率的」な専門日本語教育に関する社会的ニーズ、および研究代表者のこれまでの医療・福祉に関する談話研究の成果から、談話の持つ定型表現(「複数の単語が組み合わさって、ひとつのまとまった意味や機能を表す表現」レイ[畑佐(訳)]2012)[1]に着目し3種類の医療系談話を分析・考察する。具体的には定型表現を談話構造や構文など、談話全体を通して分析・考察することで、場面や状況が固定されているジャンルの談話においては「定型談話」のような談話のテンプレートが存在することを示す。それにより「定型表現を丸暗記して、それに情報を当てはめる形でコミュニケーションする」ことを教育するというストラテジーも存在することを示唆することを目的としたものである。 本年度は当該研究課題の研究対象のうち、カウンセリングの談話分析のための調査および文字起こし作業、分析を中心に行った。コロナ禍ということもあり、実際のカウンセリング実施は対象者1名のみのものとなったが、1-2か月に一度、4回分の調査を行うことができた。対象者の数から事例研究として実施することになるが、一回の録音時間は4時間となり、まとまったカウンセリング談話分析を行うための貴重な資料とすることができた。上述の調査の結果得られた談話の音声資料は、発話の重なりやあいづち等を含む詳細な文字起こしを行い、音声資料をWord文書の形で文字資料とした。次年度における研究成果発表につなげるべく、文字資料をもとに分析のための下準備(総合的で全体的な分析)を行い、詳細な分析観点の絞り込みを行った。 看護師談話においては、本年度は研究成果として学会発表を行う予定で準備を進めていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、発表予定だった学会・研究会の中止があり、実際の発表を行うには至っていない。そのため、次年度以降の発表実施・学会誌投稿のための執筆等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況についてであるが、調査・分析・考察といった側面においては概ね順調に進んでいる一方で、研究成果の公開といった側面においてはやや遅れがみられている状況である。 本年度は分析・考察における進捗状況についてはおおむね順調に進んだといえる。唯一、まだ音声データを入手できていなかったカウンセリング談話の調査実施・文字起こし作業を行うことができたからである。本年度において全ての談話資料をそろえることができ、分析・考察作業を開始することができた。分析・考察という側面ではおおむね当初の予定通りに進められている。 一方で、研究成果の公開といった側面においては若干の遅れがみられる。本課題の申請をした時期には予想をしていなかった、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、国際大会をはじめとする複数の学会・研究会の中には開催中止(発表募集なし)といったものもあった。そのため、本年度に口頭発表を応募し、実際に発表する予定だった学会・研究会に応募することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、研究成果の発表を年度当初から積極的に行うことが挙げられる。昨年度は調査・分析・考察においては概ね当初の予定通りに研究を進めることができ、それに関しては一定の成果を挙げられている。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により複数の研究会・学会で開催実施が見送られ、発表機会が得られないことがあったため、研究成果公開といった観点からは若干遅れているからである。 本年度中止であった学会・研究会もこの1年を経て、オンライン開催が広く実施されるようになり、最終年度はオンラインであれば研究成果を公開できる場が数多くあるため、日本語教育、日本語研究を中心とした学会・発表会で発表を行い、幅広い研究成果の公開と研究内容の充実を図るつもりである。一方で、学会誌投稿も積極的に行っていくつもりである。査読期間等を考慮すると年度中の雑誌掲載は難しいかもしれないが、投稿自体は機会を逃さずに行い、研究成果の公開に努める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、一部の学会・研究会の中止があり、研究成果の公表と言った側面で研究の進捗状況がやや遅れている状況にある。研究費の使用においても、学会・研究会に関する費用(参加費や旅費)において未使用の状況が生じた。当該感染症の終息の見通しがつかず、学会・研究会に関する費用(参加費や旅費)として使えるのかどうかが判断できず、そのためその分が未使用の状況となった。 次年度はオンライン開催を半分くらいと予測し、学会・研究会に関する費用(参加費や旅費)においても旅費分は論文執筆に使用する書籍代とするなど、効率的な使用を行う。
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