2019 Fiscal Year Research-status Report
戦前・戦中のタイにおける日本語普及―バンコク・チェンマイ・コタバルの日本語学校
Project/Area Number |
19K13240
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
山口 雅代 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (60763795)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本語教育史 / タイの日本語普及 / チェンマイ日本語学校 / チェンマイ・ボルネオ・カンパニー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、タイにおける戦前・戦中の日本語普及の全容を明らかにすることを目的にしている。そのために、次の4つの課題をあげ、調査・研究していく。1)チェンマイ日本語学校があったボルネオ・カンパニーに南機関の支部があったのか。2)コタバル日本語学校はどこにあったのか。3)コタバル日本語学校はF機関と関係があったのか。4)日本語教師の中に諜報工作に従事した者はいたのか。 上記の4つを解明するため、2019年度に行ったことは、次の3つである。1つ目は、7月29日(月)から8月3日(土)まで台湾に行き、国立図書館・台湾大学図書館において資料を検索したことである。タイでの資料が焼却されてしまったため、台湾にその資料を求めた。この検索により、タイと台湾の関係する新聞記事を見つけることができた。2つ目は研究協力者を招聘し11月8日(金)に打合せを行い、9日(土)に大阪大学において日本タイ学会に参加し、タイ研究第一人者で元大阪外国語大学学長赤木攻先生の研究史聞き取りの会に参加したことである。チェンマイ日本語学校の日本語教師であった故富田竹二郎博士は、赤木先生と大阪外国語大学タイ語学科の同僚で親しかったことから、赤木先生に冨田先生についてお話を伺うことができた。3つ目は2020年2月21日(金)から27日(木)までタイに行き、バンコクでは「タイ日研究ネットワークセミナー」にて研究協力者と共に発表したことである。この発表は、11月8日(金)の打合せの結果、2月23日(土)の「タイ日研究ネットワークセミナー」の発表に至った。チェンマイでは日本側の研究協力者1名とタイ側2名と共に調査を行った。2月のチェンマイでの調査では、ボルネオ・カンパニー経営者の孫娘に再度インタビューを行った。またボルネオ・カンパニー周辺情報についても聞いて回った。 これらの調査から1)と4)の課題解明に努めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に申請した調査は概ね達成することができた。しかしながら、やや遅れが生じたと感じている。その理由として以下の3つがあげられる。 1つ目として、タイでの発表や調査を通してチェンマイ日本語学校の場所について疑惑が生じた点である。2020年2月23日に「タイ日研究ネットワークセミナー」でチェンマイ日本語学校の教師であった冨田竹二郎先生のインタビューについて研究協力者と発表を行った。そこで語られた冨田先生の証言と現在チェンマイ日本語学校とした場所に食い違いが出てきた。また、今回の調査でチェンマイでボルネオ・カンパニー孫娘にインタビューを行ったが、チェンマイ日本語学校の場所について疑問が発生した。今後は、まずそれらを検証していく作業が必要となった。課題1)から4)を行う以外にも、まずチェンマイ日本語学校についての場所の考察が必要となった。孫娘のインタビューを文字化し翻訳し、検証していかなければならないと考えている。しかしながら、当時を知る人物の存在がわかったが、今回は時間的に会うことが叶わなかった。2つ目として、台湾調査についてである。台湾ではタイに関する資料を見つけることができた。しかしながら、特に古い資料で南方政策に関する資料は、台湾研究古籍資料庫(中央研究院台湾史研究所)と台中にある国立公共資訊図書館に保管されており、現地に行かなければ見ることはできないことがわかった。そのため、今後この2か所の調査を行う必要が生じた。最後に、課題2)と3)についてである。2019年度コタバル周辺の南タイ・マレーシア国境は外務省の危険情報レベルは3であったため、行くことを断念した。そのため、コタバル日本語学校の調査を行うことができなかった。 以上の理由から、やや遅れていると考えるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の状況からすると、2020年度に海外での調査を行うことは難しいと思われる。また、2020年度に計画していた、研究協力者を日本へ招聘し共同で発表することも困難であろう。状況が叶えば台湾研究古籍資料庫(中央研究院台湾史研究所)と台中にある国立公共資訊図書館に保管されている資料の検索を行いたいと考えている。それまでに行っていくこととして以下を考えている。まず、台湾で集めた資料とチェンマイでの調査の整理を行っていくことである。 台湾で集めた資料は、タイについての記述があるものである。タイと台湾についての交流が見て取れる資料が多くある。タイの日本語学習者や台湾の日本語学習者の交流やそれ以外の文化交流もある。それらをまとめ、日本にある関連資料を調査し、タイと台湾の交流について言及する。 チェンマイで行った調査は、インタビューと情報収集である。インタビューは、ビデオのインタビューと音声のみのインタビューがある。ボルネオ・カンパニー孫娘のインタビューはビデオで行った。それ以外は音源のみのインタビューである。まず、ボルネオ・カンパニーの孫娘のインタビューとその他のインタビューの音源等を、タイ語で文字化し翻訳する作業を行っていく。その後これらをまとめる。研究協力者と意見交換しながら発表につなげていきたいと思っているが、発表するために、不足点等があれば、インターネットで情報を交換しながら不足点を埋めていく作業を行っていく。 上記以外にもインターネットを駆使して、情報提供者とコンタクトを取っていく。
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Causes of Carryover |
2019年度の調査費にコタバルやソンクラー行きを計画していた。しかしながら、南タイやマレーシア国境周辺は、調査時(2020年2月)において外務省の危険情報レベル3であったため、渡航を断念した。 購入物品としてPCと録音機を計画していたが、現在使用している物を使ったため、購入は来年度以降としたい。
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