2019 Fiscal Year Research-status Report
日本語教育における反転授業を用いたアカデミックリテラシー教育実践
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19K13247
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
古川 智樹 関西大学, 国際部, 准教授 (60614617)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 反転授業 / 予習講義動画 / アカデミックリテラシー / 高次能力学習型 / 学習支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国人留学生対象の日本語教育において高次能力育成型の反転授業を実施し、その効果検証及び実践モデルを構築することである。本年度は、学習項目の導入部分にあたる予習動画を撮影し、その動画に関する事前課題の作成を行い、2020年度の授業科目で試験運用及びデータの収集を行った。 本研究で行う分析は、予習動画視聴率、アカデミックCan-do Statement(以下CDS)、反転授業に関する質問紙調査(以下SQ)による学習成果分析、半構造化インタビュー(以下SSI)及びSQによる反転授業に対する学習者特性分析であり、本年度は上記学習成果分析を行った。 その結果、まずアクセスログによる講義動画視聴率では、時間の経過とともに視聴率は上がり、全体を通しての平均は約83%であった。また、予習動画視聴率とCDSとの相関関係は0.435と中程度の正の相関があることがわかった。そして、反転授業未実施クラス(平成29-30年度)と実施クラス(平成31年度)でのCDS及びSQによる満足度の平均値の比較では、CDSにおいては反転需要実施クラスの方が有意に高かったが、一方で、SQにおいては2つのグループ間に有意差は見られなかった。 本年度は調査開始初年度であり、今後引き続き、データを収集していくことによって、分析の精度を上げ、アカデミック日本語における「高次能力学習型」反転授業の有効性を検証し、今後のICTを活用した日本語教育及び留学生教育におけるアクティブ・ラーニングの可能性を見極める際の重要な情報を提供していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高次能力学習型反転授業の実践を行い、その実践で得られたデータを基に学習成果分析(反転授業未実施時と実施時のアカデミックCan-do Statement(以下CDS)の比較分析やアクセスログによる講義動画視聴率とCDSとの相関分析等)、学習者特性分析(アンケート及び半構造化インタビューによる質的分析)を行うことによって、その有効性の検証を行う。 本年度は、調査の1年目として、上記目的を達成するために、予習として用いる講義予習動画を作成し、本学で開講している外国人留学生向けアカデミック日本語科目において反転授業を実施した。そして、学期末にアクセスログ、CDS及びアンケート結果のデータを取得し、分析を行った。また、インタビュー調査に関してはデータ収集を年間を通して行い、得られたデータの文字化作業を現在行っている。本年度は以上の調査から、予習動画の視聴状況及びCDSとの相関、反転授業未実施時との比較を行い、アンケート及びインタビュー調査データも問題なく順調に取得できていることから当初の計画通り、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降(令和2年度、3年度)は、本年度(令和元年度)に得られたデータをもとに、データの信頼性を上げるため、データ収集を引き続き行い、それらを基に分析を行っていく予定である。 具体的には、講義動画視聴率、アカデミックCan-do Statement(以下CDS)、反転授業に関するアンケート調査による学習成果分析(量的分析)とSCAT(Steps for Coding and Theorization)による半構造化インタビュー分析を中心に進めていく。まず、学習成果分析では、予習動画視聴率とCDSとの相関関係、反転授業未実施クラス(平成30年度以前にデータ取得済)と実施クラス(平成31年度以降に取得)でのCDS、満足度の差等を明らかにし、日本語学習者がどの程度予習動画を事前に視聴するのか、そして、予習動画視聴率とCDSの間にどの程度の相関が見られ、予習動画を見ている学習者と見ていない学習者ではどの程度の差が見られるのかを明らかにする。次に、SCATによる分析では、LMSにeポートフォリオとして蓄積された学習成果物、学習過程を適宜参照しながら半構造化インタビューを行う。その後、データの文字起こしを行い、その基礎データに対して多重的同時並行の継続的比較分析(4ステップ・コーディング、ストーリーラインの記述)を行うことによって、学習者の反転授業という教育方法の捉え方、反転授業の中での学習の進め方、学習のプロセス、学習意識の変容過程をまとめる。 以上の分析結果及び研究成果は、随時学会等で発表を行い、フィードバックを得ながら、研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
理由:概ね計画通りに予算を執行したが、発表にしていた学会が中止になったこと、消耗品項目において一部買い控えを行ったため、次年度使用額が生じた。
使用計画:今年度の学会発表による旅費、そして、インタビュー調査人数を増やし、その謝金として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)