2019 Fiscal Year Research-status Report
英語を媒介する教室における非適切なコードスイッチングと効果的な教育的介入の研究
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19K13273
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
畑 和樹 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (70803477)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コードスイッチング / 媒介語 / 相互行為 / 連鎖組織 / 修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、語学教室における連鎖構造や活動達成のため手続きに注目し、各活動におけるコードスイッチングのデザインと参与者の志向を詳細に観察し検証するものである。初年度は本研究遂行に必要な録画データの収集を中心に行い、併せて研究課題についても段階的に取り組み始める予定であった。録画データについては、国内大学における英語を媒介語とする語学教室のデータに加え、(バックアップのため)学生同士の英会話セッションや課外活動など、可能な限りデータを取得してきた。現時点での総時間は計21時間ほどのビデオ録画データを取得済みである。一方、データの転写や分析については想定よりも遅れが発生している(後述)。初年度の成果として、予備的な知見に限られてはいるが、いくつか興味深い現象も複数散見されており、例えば以下について分析を継続している。
a)話者は規律的な姿勢(英語使用への志向)を保ちながらも、自らの発話を文法的に未完了とすることで、日本語の産出を避けながらも他の話者からの協働的な完結を促すこと(Designedly Incomplete Utterance: DIU)が知られている(Koshik, 2002)。今回のデータにおいて、特にDIUによる反応が日本語であった場合、DIU実施者は特定の手順により規律の回復を狙うことが見られた。また、いずれのケースにおいてもDIUは直前の沈黙時における特定の身体的資源(目線や姿勢)と密接に関係していることが見受けられる。
b)オンライン授業において、教員は理解を確認するための言語資源(e.g. yeah)を頻繁にターン完了の資源として利用しており、それは受け手の身体資源(うなずき)と密接にリンクしている。これは、西坂の云う「反応機会場」と非常に近い現象であり、話者(教員)は自立的に学生が反応“できる”機会を教員の発話構築を妨害しない形で提供しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の通り、初年度の成果に関して本来の計画よりも遅れている。2019年度10月に発生した台風19号における所属機関の被災、およびCOVID-19禍の影響を受け、データ取得のスケジュールに大幅な変更が必要となったことが挙げられる。
しかし、現在のところ計21時間ほどのビデオ録画データを取得済みである(いくつかはオンライン会議システムを利用した授業を含む)。前述の予備的知見については、現在検証中ではあるが、十分な数のコレクションが確認されている。よって、さらなるデータ取得と並行して分析を継続し、今年度における論文投稿・発表を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度6月14日現在、本計画以前から実施してきた研究もほぼ終了(国内論文1本掲載済、海外論文1本承認済・掲載待ち、海外論文1本修正済・再査読中)している。そのため、今年度(2年目)は本研究課題に集中できる環境にいる。従って、今年度において、データの追加収録と並行し、現在集められたコレクションの分析、発表を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた「データ収集助手賃金」であるが、前述の事由から、収集助手の募集・使用ができなかった。そこで次年度に、同様の理由で使用を予定している。
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