2020 Fiscal Year Research-status Report
第二言語ライティング教授法と評価:ジャンル・アプローチと教授学習サイクル
Project/Area Number |
19K13278
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
長尾 明子 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (60570124)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Genre-based approach / L2 writing / 選択体系機能言語学(SFL) / SFL metafunctions / アカデミックエッセー / 第二言語ライティング / GBA準拠ライティング / 教授学習サイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本人大学生である第二言語ライティング学習者がどのように新人から経験ある書き手に移行するかを検証する。 「RQ①学習者が書いたエッセー, Systemic Functional Linguistics (SFL)の枠組みでつくられたルーブリックにより評価分析し,テキストを構成する言語の3つの機能の理解がどのように変化するか」について以下のことが明らかになった。アカデミックエッセーは一般的に:序論、先行研究、方法、結果、考察、結論、参考文献を含むセクションで構成されている。これらのアカデミックエッセー内で主に4つのジャンルが多く利用されている。例えば,「先行研究レビュー」の部分は,critical (discussion)ジャンルの使用;Methodsの部分にはdescriptiveと呼ばれるジャンルの使用;結果や考察の部分にはanalyticalやpersuasiveと呼ばれるジャンルが多く使用されていることが判った。ここから2019年度はanalyticalとdiscussion genres の2種類を, 2020年度はdescriptiveとdiscussion genresを英語ライティング授業実践に導入した。2020年度は学習者が書いたエッセーを評価するSFLの枠組みで作成したルーブリックを作成した。さらに,その評価項目を使用し英語学者のメタ認知や理解度を可視化した。 「RQ②教授学習サイクルに沿ったライティングタスクの可視化」および「RQ③ 汎用性の高いライティングタスクの開発」について,2019年度と2020年度,オーストラリアの大学に所属するSFL専門家研究者およびジャンルアプローチと教授学習サイクルの専門家研究者にアドバイザリーになっていただき,本研究の授業実践,授業タスク内容に関して定期的にご指摘,ご指導いただいている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題①学習者が書いたテキストの構成と言語機能がどのように変化するか;研究課題②SFL-GBA準拠ライティング指導で取り入れるタスクとテキスト理解の関係性;研究課題③汎用性の高いSFL-GBA準拠ライティング教授法の開発
研究課題①②について,申請者は教授学習サイクルを導入したSFL-GBA準拠L2ライティングを継続して実践している。当初は対面授業にて授業実践をおこなう予定であったがCOVID-19の影響があり,オンライン授業に切り替え実践を継続している。授業形態の違いが,英語学習者の英文ライティング活動にどのような影響を与えたかについて疑問である。2021年度は英文アカデミックエッセーに使用されているジャンルの分析を実施し,主に4つのジャンルを特定した。そのため,より適切なジャンルテキストを実践授業に導入することが可能となった。さらに,2020年度-2021年度は,オーストラリア国内にいるジャンルアプローチ研究者の方にアドバイザリーになっていただけることとなり,本研究の授業実践の見直し,及び英語ライティング関連タスクの改善を行うことが可能となった。具体的に,授業実践内容の大きな改善点は,事前・事後・遅延エッセーライティングの際,学習者は自己の経験に関してエッセーを書くのではなく,指定英文リーディングマテリアルを分析者が選定し,それを読み要約する活動を導入した点である。これにより,学習者は,よりジャンルの目的に沿った,また,アカデミックエッセー要素に近い英文テキストを産出することができるようになった。これらのタスク内容の改善により,英語学習者の英文ライティングの理解に影響をあたえ,英文ライティングに関するメタ認知を高める結果となった。 研究課題③について,SFL-GBA準拠ライティング教授法を多くの教員に認知してもらうため,分析結果をオンライン国際学会で発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
RQ①の結果の一部は以下のとおりである。英語学習者のdescriptive report genreにおける構成,3つのメタ認知:the ideational, interpersonal, and textual meaningsの理解の変化は以下の傾向があった。英語力の低いグループとジャンル授業初心者の学習者は,エッセーのトピックの内容、出来事、背景情報(ideational)と、読者と書き手の間の社会的・権力的関係(interpersonal)についての理解が向上する傾向にあった。英語力の高いグループの学習者や、ジャンル別アプローチのライティング経験者は、エッセーの構造や一貫性(textual)についての理解を示した。2021年度は別ジャンルエッセーに対して上述と同様な項目を分析する。 英語学習者が書いた複数のジャンル(Analytical,discussion,descriptive,persuasive)を取り入れたアカデミックエッセーデータの収集が終わる。各ジャンルに対してSFLの枠組みでつくられたルーブリック評価表を完成させるとともに,そのルーブリックを使用し,テキストを構成する言語の3つの機能(SFLメタ認知・機能)の理解がどのように変化するかについて,統計処理を行う。 2019年度と通常クラスルームをベースとしたSFL-GBA準拠と教授学習サイクルを導入したL2ライティングクラス実践,2020年度はオンライン授業を実施した。2021年度は通常クラスルーム及びオンライン授業の混合となる予定である。これらの異なる授業形態がどのように英語学習者のライティング学習および書くことへの理解に影響を与えたのかアンケートやインタビューの追加調査を実施する。
|
Causes of Carryover |
COVID-19により海外および国内出張・学会発表が不可となったため。
|