2019 Fiscal Year Research-status Report
他者とのやりとりが外国語運用能力強化に与える効果とその神経基盤の解明
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19K13285
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
中川 恵理 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任助教 (20734940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | fMRI / インタラクション / スピーキング |
Outline of Annual Research Achievements |
通常ヒトは他者とのやりとりを通して母語を習得していく。すなわち言語運用能力は主に他者との社会的なやりとり(インタラクション)の中で発達するものであり、外国語の場合もインタラクションを通して効果的に習得できる可能性は高いと考えられる。本研究では、他者との相互作用が外国語学習に与える効果とその神経基盤を明らかにすることを目的としている。具体的には①学習者の発話に対する聞き手の反応がどのように作用して外国語学習を促進するか、またそれはどのような神経基盤に支えられているかを、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳機能計測実験により明らかにすること、②科学的なエビデンスに基づいた効果的な外国語学習・指導方法の提案を行うこと、を目指す。実際の教育現場においても多くの場面で対話形式の学習法が取り入れられているが、対話型のどういった点が学習に寄与しているのかは自明ではなかった。本研究はこの点について認知神経科学的に取り組むもので、第二言語(L2)習得・外国語教育学と神経科学を融合した、学際的で独創的な研究である。本研究が完成することにより、L2処理・学習モデルを構築することに加え、効果的なL2学習・指導方法に対する示唆を提供できる。また、学習者が個人でビデオや音声を利用して学習するe-learning教材等の改良にも応用可能である。このように本研究は、L2習得研究領域、外国語教育領域、教育工学領域など幅広い分野にインパクトを与えることができる。学習に関わる神経基盤を明らかにするという基礎的研究でありながら、得られた成果をすぐに外国語教育場面に還元できるという点においても本研究の意義がある。 ライフイベントにより研究代表者は2019年5月から2020年1月末まで研究を中断していたため、2019年度に実施した研究内容は文献調査にとどまっている。実験については2020年度に本格的に開始する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題の進捗が遅れているのは、研究代表者が2019年5月より産休に入って6月に出産し、その後育児のため研究を中断していたためである。研究中断以前も研究推進に影響は少なからずあった。本研究課題ではMRIを用いた実験を計画しているが、実験の実施にあたっては高磁場環境での作業を伴う。高磁場が胎児に与える影響は未解明の点も多いため、産休以前もMRI実験は中止していた。また、2020年2月に復職したが、この頃より新型コロナウイルスが本格的に蔓延し始め、ヒトを対象とした実験を実施することができなくなった。以上のことから、2019年度はほとんど計画通りに研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は出産・育児に伴い約1年間研究を中断していた。また、2020年2月に職場復帰後は新型コロナウイルス感染症の影響で、研究計画に遅延が生じている。これをふまえ、今後は以下の計画で研究を進める。 2020年度には、発話時に聞き手からの反応を得ることにより仮説検証が行われ、外国語学習が促進されるかを検討するための行動実験を行う。まずは先行研究の調査と予備実験を行い、刺激や実験デザインを調整する。デザインが確定したらあらためて数名の被験者を対象に予備実験を行い、問題なければ本実験へと移行する。被験者数は40名(20ペア)を予定している。2名の被験者を同時にリクルートし、同時に教示後別室で実験を実施することでデータ収集時間の短縮を図る。データ収集と並行して解析を随時進める。得られた結果をまとめて抄録を作成し、翌年の学会発表を目指す。2021年度には、前年度に実施した行動実験の結果をまとめ、学会発表および論文投稿を行う。これと並行して、次に行うfMRI実験(行動実験で明らかになった学習効果に関わる神経基盤の検討)の準備を進め、予備実験を実施する。予備実験の結果をもとにデザインの調整を行い、本実験へと移行する。2022年度には、前年度に準備・開始したfMRI実験のデータ収集を引き続き行う。被験者数は60名(30ペア)程度を予定しているが、必要に応じて適宜追加する。並行してデータ解析を進め、実験の結果をまとめる。必要に応じて追加実験や解析を行う。また、2020年度に実施した行動実験の結果をまとめた論文に査読コメントがつけばこれに対応するが、必要に応じて追加のデータ解析を行う。
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Causes of Carryover |
主として出産・育児に伴い2019年度は計画通りに研究を進められなかったため次年度使用額が生じた。2019年度に予定していた実験を2020年度に実施し、助成金を使用する予定である。
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