2020 Fiscal Year Research-status Report
他者とのやりとりが外国語運用能力強化に与える効果とその神経基盤の解明
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19K13285
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
中川 恵理 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任助教 (20734940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第二言語学習 / スピーキング / インタラクション / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの言語運用能力は主に他者との社会的なやりとり(インタラクション)の中で発達する。母語に限らず外国語の場合もインタラクションを通して効果的に習得できる可能性は高い。本研究の目的は、発話に対する聞き手の反応が外国語学習に与える効果とその神経基盤を明らかにすることである。 2020年度は、未知の疑似英単語を音読後に教師から頷き等の反応があったとき、日本人英語学習者がどのようにその情報を処理するかを検討するために実施した、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて実験結果を論文にまとめ、国際誌(NeuroImage)に発表した。本実験により、他者ではなく自身の発話に随伴した「教師の反応」という社会的な信号は、運動制御システムへのフィードバックとして作用することが明らかになったが、発話は調音器官の運動を伴うことを考慮すると、聞き手の反応の作用で発話技能が強化されるのではないかと考えた。そこで今後は、外国語で話す能力(調音器官の運動能力)の強化に聞き手の反応が与える効果とその神経基盤を明らかにするためfMRI実験を実施する。 実際の教育現場においては多くの場面でインタラクティブな学習法が取り入れられているが、どういった点が学習に寄与しているのかは自明ではなかった。本研究が完成することにより、認知神経科学的なエビデンスに基づいた効果的な外国語学習・指導方法の提案が可能となる。また、インタラクティブなe-learning教材の開発等の応用可能性がある。学習に関わる神経基盤を明らかにするという基礎的研究でありながら、得られた成果を外国語教育の現場に還元できるという点に本研究の意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外国語学習者の発話に対する英語教師の承認反応がどのように処理されているかを検討したfMRI実験の結果をまとめた論文を国際誌に発表した。本成果をもとに新たな実験計画を立案し、まもなく予備実験を開始予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、fMRI実験の実施に向けた予備調査として行動実験を行う。この行動実験で得られたデータをもとに刺激や実験デザインを調整、fMRI実験を実施し、並行してデータ解析を進める。データの解析結果をみて適宜追加実験を実施する。実験結果をまとめ、国際誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で学会等の会議はオンライン開催となったため、旅費として計上していた予算を使用しなかった。この旅費分はソフトウェア購入費にあて、リモートワーク時でも必要なデータ解析が行えるように環境を整備する。 また準備に時間を要し、昨年度中には実験を実施しなかったため、被験者謝金を使用しなかった。2021年度4月より実験を開始しており、今後被験者謝金を使用していく計画である。
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