2022 Fiscal Year Research-status Report
他者とのやりとりが外国語運用能力強化に与える効果とその神経基盤の解明
Project/Area Number |
19K13285
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中川 恵理 静岡大学, 情報学部, 講師 (20734940)
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Project Period (FY) |
2021-11-01 – 2025-03-31
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Keywords | 外国語学習 / スピーキング / インタラクション / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの言語運用能力は主に他者との社会的なやりとり(インタラクション)の中で発達する。母語に限らず外国語の場合も、インタラクションを通して効果的に習得できる可能性は高い。本研究の目的は、発話に対する聞き手の反応が外国語学習に与える効果とその神経基盤を明らかにすることである。 本研究ではまず、未知の疑似英単語を音読後に教師から頷き等の反応があったとき、日本人英語学習者がどのようにその情報を処理するかを検討するため、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた実験を実施した。本実験により、他者ではなく自己の行動(発話)に随伴した反応があった後にのみ視覚野から一次運動野への機能的結合が強くなり、これが「自他の区別」に関わる脳領域により調整されていることがわかった。また、視覚野との機能的結合が強くなるのは、一次運動野のなかでも手や足の運動ではなく口の運動に関わると言われている領域であった (Nakagawa et al., 2021, NeuroImage)。発話は調音器官の運動を伴うことを考慮すると、聞き手の反応の作用で発話技能が強化される可能性は高いと考えた。そこで、聞き手の反応により話す能力(調音器官の運動能力)が強化されるかを検討する実験を計画し、実施の準備を進めた。 実際の教育現場においては多くの場面でインタラクティブな学習法が取り入れられているが、どういった点が学習に寄与しているのかは自明ではなかった。本研究が完成することにより、認知神経科学的なエビデンスに基づいた効果的な外国語学習・指導方法の提案が可能となる。また、インタラクティブなe-learning教材の開発等の応用可能性がある。学習に関わる神経基盤を明らかにするという基礎的研究でありながら、得られた成果を外国語教育の現場に還元できるという点に本研究の意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究機関の異動があり、研究環境の整備に時間を要した。また、出産・育児のため研究を一時中断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は現在中断しており、2023年10月に再開を予定している。再開後は以下の計画で研究を実施する。 2023年度は、前回研究中断前(2021年6月以前)に実施した行動実験の予備実験データの解析を行い、その結果をもとに本実験の実施に向けた調整、準備を行う。2023年11月を目処に実験デザインを決定し、デザインの最適化のため12月中に5名程度の被験者を対象に予備実験を実施する。実験デザインが確定次第本実験を開始し、まずは10名程度のデータを取得する。データ解析結果に基づき、必要に応じて実験デザインの見直し、調整を行う。問題がなければ引き続き実験を行い、合計30~40名のデータを取得する。実験実施時期は2024年1月~ 3月頃を予定している。 2024年度には前年度に実施した行動実験の結果をまとめ、学会発表および論文投稿を行う。査読コメントに応じて必要があれば追加実験を行い、国内外で開催される学会・研究会に参加して研究成果発表を行う。
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