2019 Fiscal Year Research-status Report
語学学習・ジェンダー・言語イデオロギー―フィリピン系スカイプ英会話をめぐって―
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19K13287
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
田嶋 美砂子 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (10837553)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 語学学習 / ジェンダー / 言語イデオロギー / フィリピン系スカイプ英会話 / ネイティブネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトの目的は,近年日本で人気を博しているフィリピン系スカイプ英会話に焦点をあて,語学学習・ジェンダー・言語イデオロギーの関係性について探究することである。本プロジェクトは,言語人類学に端を発する「言語イデオロギー論」に依拠し,言語イデオロギーを「人々の言語に対する思考・信念・感情」と捉えた上で,研究を進めている。語学学習・ジェンダー・言語イデオロギーの関係性はこれまで,日本人女性英語学習者の西洋諸国や白人男性英会話講師に対する「あこがれ」という感情から論じられることが大半であった。しかし,本プロジェクトでは,この「あこがれ」論だけでは説明し得ない現象の解明に取り組んでいる。具体的には,フィリピン系スカイプ英会話を受講する日本人男性英語学習者に着目し,彼らの語りを通じて,フィリピン人女性英会話講師がジェンダー化され,性的対象化されていく様子を調査している。また,新しい語学教育産業(フィリピン系スカイプ英会話)の興隆という文脈の中で,日本社会で長きにわたり保持されてきた「ネイティブ・スピーカー信仰」にも再び注目し,「ネイティブネス=権力性」「ノン・ネイティブネス=非権力性」という従来の固定的な見解をよりクリティカルな視点から考察することも目的としている。なお,研究課題は,以下の通りである。 ①日本人男性英語学習者の語りによって,フィリピン人女性英会話講師がどのようにジェンダー化され,性的対象化されているのかをより詳細に検証する。 ②フィリピン系スカイプ英会話という文脈において,ネイティブ・スピーカー概念の権力性がどのように利用されたり,再生産されたり,あるいは逆に転覆されたりしているのかをより詳細に検証する。 本プロジェクトでは,上記の現象を学術的に分析し,議論するための新しい理論的枠組を構築することも目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の研究計画は,以下の通りであった。 ①当該分野にまつわる国内外の学術論文に触れ,先行研究により深く精通する。また,学会での発表および意見交換を通じて,情報収集を図る。 ②これまでに収集したデータをもとに,学術論文を執筆する。 ③フィリピン系スカイプ英会話のプロバイダーがオンライン上で展開する広告を分析し,彼らがフィリピン在住講師の卓越性を宣伝する際に,ネイティブ・スピーカー概念の権力性をどのように利用しているのかという点について,より詳細な分析を試みる。 ④フィリピン系スカイプ英会話を受講している日本人男性学習者を対象に,新たなインタビュー調査を遂行する。 ①~③については,ほぼ計画通り,実行した。しかし,年度末に予定していた④に関しては,コロナウィルス感染拡大に伴う外出自粛要請により,研究参加者へのアクセスが難しく,行うことができなかった。オンライン技術を用いて,リモートでインタビューすることも理論的には可能であるが,本プロジェクトの目的は,研究参加者と信頼関係を築きながら,時間をかけて直接対話することによって,フィリピン人女性講師がジェンダー化・性的対象化されていく様子を理解することにある。そのため,④については,現在の情勢が落ち着き次第,再開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記載した④に関しては,できる限り迅速に再開する。万が一,情勢が収束せず,直接的な対話が困難である場合は,オンライン技術を用いて,リモートでインタビューを実施することも検討する。すでに収集してあるデータをもとにした論文執筆は,引き続き進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)