2021 Fiscal Year Research-status Report
Revealing the innateness of human language from grammatical errors of second language learners
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19K13288
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山田 敏幸 群馬大学, 共同教育学部, 講師 (50756103)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 外国語教育 / 第二言語学習者 / 文法的誤り / 人間言語の生得性 / 理論と実践の往還 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二言語学習者の文法的誤りが、一切インプットを受けたことがない言語で文法的に容認される構造であるかを分析することで、第二言語学習者の文法的誤りをとおして人間言語の生得性を実証できるかどうかを明らかにすることである。また、第二言語学習者の文法的誤りを収集・分析することで、学習者がつまずきやすい文法項目の分布と傾向を同定し、英語教育や日本語教育などの外国語教育に貢献することである。 2021年度の成果として、①まず、自由英作文の手法をとおして、日本人英語学習者から新たに13645個の英文を収集し、文法的誤りを含む2151文を分析対象とすることができた。②次に、誤り分析により、2359個の文法的誤りを抽出し、主な誤りとして冠詞の誤りを807個(34.21%)、数一致の誤りを380個(16.11%)、前置詞の誤りを289個(12.25%)、時制の誤りを107個(4.54%)同定することで、日本人英語学習者がつまずきやすい文法項目を明らかにできたことと同時に、文法的誤りの多くが母語の日本語からの影響によるものであることが明らかになった。一方で、be動詞の過剰使用(例えば、“In this way, these methods were improved me.”)のように、母語の日本語による影響とは考えにくい誤りが一定数あり、ある程度の種類や傾向が同定できる可能性が見出された。③最後に、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、質問紙調査と、自己ペース読文課題などのリアルタイムで第二言語学習者の言語処理を観察できる実験を速やかに実施できるように準備を進めることができ、また新たに各種コーパスなどの資料収集を通して、日本人英語学習者の文法的誤りの収集のみならず、留学生からのデータ収集が難しい現状において日本語学習者の文法的誤りも今後の分析のために収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、5つの事項について以下の方法で実施する計画である。(A)まず、日本人英語学習者の文法的誤りを収集する。(B)次に、収集した文法的誤りを含む非文を実験的に検討する。具体的には、データとしての信頼性を高めるために、各非文の容認可能度を質問紙や反応時間測定(自己ペース読文課題など)の実験を実施して数値化する。(C)次に、収集した文法的誤りを分析する。(D)次に、日本人英語学習者がつまずきやすい文法項目を同定する。(E)最後に、上記(A)~(D)を応用して、分析対象を日本語学習者に拡張する。 2021年度は上記のうち、昨年度に引き続き、(A)、(C)、(D)の3項目を進展させることができた。昨年度同様、当初予期していなかった新型コロナウイルス感染症問題のため、(B)に係る行動実験が遂行できなかったが、各種コーパスにより、日本人英語学習者と日本語学習者の文法的誤りを収集・分析できる可能性が見通せてきた。そのため、次年度は状況を鑑みながら、行動実験を可能な範囲で実施すると同時に、資料分析をとおして研究を効率的に加速させることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】でも述べたが、2021年度も昨年度同様、新型コロナウイルス感染症という当初予期していなかった問題のため、計画していた行動実験を実施することが困難であった。状況を鑑みて、これまでの準備をもって、予備実験、本実験を遂行する予定だが、新型コロナウイルス感染症問題の収束がなかなか見通せないことから、すぐに実験遂行をすることが難しいことが考えられる。そのため、本研究が実施する予定の5つの事項について、(B)「収集した文法的誤りを含む非文を実験的に検討する」は可能な状況になってから実施する。ただ、各種コーパスの資料収集によって、日本人英語学習者のみならず日本語学習者の文法的誤りの収集可能性が見通せてきたので、行動実験だけでなく、資料分析をとおして研究の目的が完遂するように、残りの4つの事項(A)「日本人英語学習者の文法的誤りを収集する」、(C)「収集した文法的誤りを分析する」、(D)「日本人英語学習者がつまずきやすい文法項目を同定する」、(E)「上記(A)~(D)を応用して、分析対象を日本語学習者に拡張する」について可能な範囲で実施し、特に(A)、(C)、(D)に関して分析するデータの量を増やすことでデータの質・信頼性を高めるなどして、研究計画全体を加速して前進させる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は新型コロナウイルス感染症問題により、当初計画していた行動実験ができなかったことが大きな理由である。次年度の使用計画としては、当初計画していた行動実験を効率的に遂行できるように、実験遂行に伴う物品の購入や謝金などに当てる。
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