2021 Fiscal Year Research-status Report
Learners' use of Japanese during communication activities for learning English
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19K13300
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
小泉 ユサ 明治学院大学, 教養教育センター, 講師 (70460029)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 第一言語 / コミュニケーション活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、第二言語習得論の研究者から、学習者の第一言語は、コミュニケーション中心の第二言語の授業においても重要な役割を果たすという考え方が示されており、海外では実証研究も行なわれている。このテーマは、大多数の学習者が共通の第一言語を持つ日本のような学習環境においてとりわけ重要である。日本の英語教育では、長年にわたり、文法、語彙、読解を効率よく教える手段として、日本語で文法を説明し、英文を日本語に訳して理解を図るスタイルの授業が広く行われてきた。その結果、学習者も日本語を介して語彙や構文の知識を身につけているのが一般的である。こうしたことを踏まえると、英語教育の主眼がコミュニケーション能力の習得に移行しつつある現在でも、英語で表現するための準備の段階や言語の形式や正確さを重視する場面では、部分的に日本語を使用させた方が、学習者の知識をより効果的に運用させることができ、それが英語の産出物にも良い影響を与える可能性があるといえる。 しかし、このテーマの先行研究の大部分は、英語圏での第二言語イマージョン教育や外国語教育、欧州の非英語圏での英語教育の場で行われたもので、そこから導き出された結論がそのまま日本の学習者にあてはまるとは言いがたい。本研究は、日本の英語教育にとって重要なこのテーマを、日本の学習者から収集したデータに基づいて探求するものである。具体的には、日本語を第一言語とする学習者がペアや小グループで英文ライティング活動に取り組む際の日本語の使用について、以下の3点を明らかにすることを目指す。 1.日本語は、共同ライティング活動のどの段階で、どのような機能を果たすか。 2.日本語使用は、産出物である英作文にどのように影響するか。 3.学習者自身は、共同ライティング活動における日本語の使用についてどのように考えているか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症対策のため担当する授業がすべて遠隔での実施となり、予定していたデータ収集を行うことができなかった。それに代えて、過去に収集した対話データを用いて次の作業を行った。(1) 共同ライティング中の日本語の発話量を測定し、作文の質(流暢さ、正確さ、複雑さ、内容、構成)との相関性を分析した。(2) 日本語の発話量が特に多いペアと特に少ないペアについて、共同ライティングの作業プロセスを比較した。具体的には、2019年度に作成した共同ライティング仮モデルの「計画」、「文章化」、「見直し」の3段階が、15分間の作業のどの時点で発生し、どれだけの時間が費やされているかを分析・比較した。また、主たる作業から一時的に離れ、言語形式についての話し合い、タスク管理、タスクと無関係の会話に従事する頻度と時間を分析・比較した。(3) 前年度に考案したオンライン会議システムを利用した共同ライティング活動を、研究代表者が担当する授業の中で試行し、オンライン会議システムの録音機能とオンラインの文書共同編集機能を使用して、対話と作文のパイロットデータを収集した。 上記1と2の結果については、2021年8月開催(オンライン)の大学英語教育学会(JACET)60周年記念国際大会および2022年3月開催(オンライン)の56th RELC International Conferenceにおける口頭発表の中で報告するとともに、研究論文にまとめ、JACET International Convention Selected Papers, Volume 8に寄稿した。また、2019年度に実施し、2020年度に集計・分析を行った個人指導における使用言語についての学生アンケートの結果を共著論文にまとめ、明治学院大学教養教育センター紀要「カルチュール」第16巻第1号に寄稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に収集したパイロットデータのうち、録音データについては文字起こしを行い、作文データとともに、前年度までに確立した手法を用いて分析を行う。分析結果に基づいて、本データ収集に向けて、遠隔でのデータ収集および分析手法の見直しを行う。2022年春学期の途中で授業形態が遠隔から対面に切り替わる予定であるため、対面でのデータ収集に備え、共同ライティング活動の試行を行う。秋学期の授業の中で本データの収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に収集したパイロットデータうち、音声データの書き起こしを専門業者に依頼し謝金を支払う予定であったが、時間的制約のため年度内に実施することができなかった。また、新型コロナウィルス感染症対策として、海外・国内の学会ともオンライン開催となったため、旅費が発生しなかった。次年度使用分については、パイロットデータおよび本データの書き起こしに対する謝金として使用するとともに、海外・国内学会の参加費および対面で開催された場合は旅費に充てる。
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Research Products
(6 results)