2019 Fiscal Year Research-status Report
会話分析により記述された暗黙知を英語教師が利用する方法の開発
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19K13305
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石野 未架 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (20822836)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教師の権力 / 次話者選択の実践 / 教育社会学 / IRE連鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、研究者が保有している会話分析による知見を、英語教師と共有できる知識に変換し、実際に利用できるようにするための研修プログラムを開発することである。この目的を達成するために、次の2つの小研究課題を設定している。 ①会話分析によって記述した手続き的知識を教師の実践に必要な知識に簡略化する規則の開発。 ②課題①によって簡略化した知識を教師が実際に利用できるようにするための研修プログラムの開発。 今年度は①の課題を達成すべく次の3つの活動に取り組んできた。1)先行研究の知見の整理、及び記述された手続的知識のデータベース化、2)研究協力教師への面接調査、3)録画した面接調査データの分析である。1)では、先行研究で明らかにされている教師の授業における手続き的知識を整理した。具体的には1979年に米国で初めて公開された代表的研究結果まで遡り、現在までの研究結果と合わせて知見の整理を行い、既存のデータと比較した。2)では1)で整理した手続き的知識の記述について、教師がどのような情報を必要と考えるのかを把握することを目的に面接調査を行った。対象者は中学校・高等学校の英語教師である。3)では録画した面接データの中で教師が必要とする情報を類型化する作業を行った。これらの研究活動のうち1)で整理した知見とデータの比較から新たな教師の実践知を得た。それは、次のaとbである。a)学校英語教育におけるティームティーチング授業で外国人指導助手の役割を活かす技法として評価行為を委ねるという行為があること。b)教室のIRE連鎖において教師の負担を軽減するI部分の構築方法があるということ。以上の分析結果に関連した研究成果は教育系の学会にて口頭発表を行い、学会参加者から分析の妥当性や知見の有用性について多くの助言やコメントを得た。更にそれらを基に内容を修正し、論文にまとめて各学術誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度の研究計画内容は以下の通りであった。 1)先行研究の知見の整理、及び記述された手続的知識のデータベース化、2)研究協力教師への面接調査、3)録画した面接調査データの分析である。 上述3点の計画内容に沿って進捗状況を概観すると、 1)については、夏までにほぼ予定していた先行研究のレビューを終え、情報を整理しているので概ね計画通りに進めることができている。2)については、研究代表者の育児休業あけの秋以降に順次研究協力者である20名の教師と面接を行う予定であった。この理由は研究代表者の所属研究機関の規定により、育児休業期間中は出張やフィールドワークなどの研究活動が制限されるためである。研究代表者の教育活動の期間が10月から1月にかけて集中しているため、主な面接の予定は1月末から3月末にかけて組まれていた。しかし、2020年1月以降、感染症の流行の影響で計画通りの面接調査が中止または延期されており、現在8名の教師への面接調査しか行われていない状況である。従って2)については進行が遅れている。また、3)については、2)の進行の遅れにともない録画データの収集も計画の半分程度の進捗にとどまっている。 加えて、2月と3月に参加予定であった学会の中止や延期が相次ぎ、現時点での研究成果について専門研究者コミュニティによるフィードバックを充分に得られていない状況である。以上の進捗状況から、令和元年度の研究はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究活動の主軸は次の3つの計画であった。①英語授業データの収集、②英語教師を対象とした研修への会話分析アプローチの導入、③ここまでで得られた知見を学会等で発表。しかし、予期せぬ感染症の流行からこれらの活動を計画通りに進めていくこは難しいと考え、研究活動のオンライン化を検討している。 例えば①についてはデータ収集のオンライン化である。何故なら、感染症の拡大防止策とし、データ収集の対象となっていた中学校や高等学校自体が閉鎖しているため、本来計画していたデータ収集が行えないからである。しかし、オンライン授業等を行う学校は多く、研究協力校でもそのような形態で授業を行っている。従って、研究協力校と交渉し、オンライン授業の録画データの提供を依頼して収集することを計画している。 ②については、英語教師を対象にした研修への会話分析導入についてもオンラインでの研修への導入を検討している。当初の計画では、研修場所は学校現場であったが、感染症拡大の影響により一時的に研修が中止となっている状況である。従って今後は、オンラインで行なわれる研修などへの会話分析のアプローチの導入を検討している。しかしオンラインの研修についてはデータ使用に関する研究協力校との契約内容に新たな事項を加えない限りは実行不可能である。今後はデータ使用に関する許諾書の内容について研究協力校と協議しながら今年度中の実行を目指していく。 ③については、今年度夏に発表予定であった国際学会などのうち1つが開催を1年延期、そして2つは中止となっている。このため、計画通りに分析結果について海外の専門研究者からフィードバックを得ることが難しい状況である。今後は学会での発表だけでなく、海外の専門研究者に個別で連絡をとり、オンラインでの面談によって、本研究の分析結果や進捗にコメントをもらうことを計画している。
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