2019 Fiscal Year Research-status Report
東アジア君主制国家における臣下服喪儀礼の比較史的研究
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19K13320
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 洋平 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (40737243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 君臣秩序 / 官僚制 / 礼制 / 喪葬儀礼 / 服喪 / 臨・挙哀 / 近臣 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度のはじめには、PC・デジタルペーパー・『大漢和辞典』(デジタル版)等の研究ツール、『神道大系』等基礎的史料、研究文献を購入し、研究環境を整備した。この整備がある程度落付いた段階で、中国皇帝と天皇喪礼に関わる近臣・侍臣動向の考察を行った。これまで、すでに、中国側では『晋書』『魏書』、日本側では『続日本後紀』や古記録類から主だった関係史料を収集していたが、さらに精度をあげるべく追加収集を行った。具体的には、これまで把握しきれていなかった唐代の服喪や臨(慟哭儀礼)の状況を正史である『旧唐書』、儀式書である『大唐元陵儀注』『大唐開元礼』を用いて考察し、あわせて官僚制に関して『大唐六典』を参照した。考察の結果、唐代においても晋や北魏事例と同様に、官僚制的秩序に沿った臣下服喪・臨が営まれ、とくに中書・門下五品以上をはじめとする皇帝の供奉官は新たに即位した皇帝と吉凶をともにする中心的存在であったことが確認できた。 こうした進捗状況のなか、史学会よりシンポジウム「日本律令制と中国文明」報告の依頼を受け、日中君主喪礼における近臣動向を報告することとした。当該シンポジウムは、日本の律令制度(その根底として存在した礼制も含む)を中国との関係性において考える主旨であったため、日本の律令制度が原則的に機能していた八世紀に言及する必要性が生じた。八世紀に臣下が行う服喪儀礼については以前考察し論文も発表していたが、史料が簡潔なこともあって具体的動向を追うことができず、近臣については考察を断念していた部分もあった。そこで、再度、律令や『日本書紀』『続日本紀』を読み込むことで天皇喪礼時の近臣動向を把握するよう努めた。結果、養老職制律(従駕稽違条)・元明太上天皇遺詔・聖武太上天皇喪礼時の近衛統率者動向が天皇喪礼時の近臣動向を考えるヒントになる可能性を見いだし、日中比較に足掛かりをつけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
君主喪礼時の近臣動向について、中国側史料の収集に大体目処がつき、日本側についても、八世紀の近臣動向を考える手掛かりとなる史料を見いだしたことで概ね順調と評価できる。また、その内容をシンポジウムで報告することができたことも評価理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
君主喪礼における日中の相違の背景をさらに検討していく。とくに日本側では、遺詔による薄葬の導入と相俟って、喪礼が君臣参加の国家儀礼から天皇家の私的儀礼へと変貌していくよう見受けられる点が重要と思われる。こうした変化は令制の侍臣ではなく、天皇と人格的に結合する「近習臣」が喪礼において中心的役割を担っていく動向とも関連すると考えられるので、引き続き、検討を深めていく。喪礼における近臣動向の日中比較については、国家における儀礼の位相を認識した上での慎重な比較が必要と考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行によって、研究会・調査等の計画が中止となったこと、また、課題の進捗状況を考慮し、書籍含む一部物品の購入を見合わせたことによる。次年度使用額は翌年請求分と合わせて、書籍や事務用品の購入費用、史料調査や研究会への旅費(関東・関西方面)、その他、文献複写や研究成果発信の費用に使用する。
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Research Products
(1 results)