2019 Fiscal Year Research-status Report
イタリア都市貴族と日本人―異文化との直接的邂逅とイメージの受容―
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19K13321
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小川 仁 関西大学, 東西学術研究所, PD (70827849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慶長遣欧使節 / 天正遣欧使節 / コロンナ家 / バルベリーニ家 / オルシーニ家 / 17世紀ナポリ / ローマ / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 ・天正・慶長遣欧使節との邂逅が、ローマの有力貴族らの日本像構築に与えた具体的影響を明確にする。 【研究実施計画】 一年目 ローマの複数の文書館で有力貴族に関わる史料文を調査 【本研究の実施経過】 本研究では、まず5月に2週間かけて、ローマ国立文書館(カピトリーノ文書館)、ヴァチカン図書館、コロンナ文書館で文献調査を実施した。ローマ国立文書館では、ローマの最有力貴族の一つであるオルシーニ家の文書群を調査した。当該文書群は、天正・慶長両使節がローマに滞在した期間である1585年、1615年10月~1616年1月を中心に調査を進めたが、現在のところ、日本関係記述が含まれている史料を見出すには至っていない。その一方で、これまで継続的に調査を進め、多くの日本関係史料を見出しているコロンナ文書館では、日本関連記述を含む16世紀ポルトガル外交史に関する論文(手稿、イタリア語、16世紀中頃)、日本に関する地理情報が含まれる地理書(手稿、イタリア語、17世紀頃)を確認した。コロンナ家とオルシーニ家は、ローマ近郊で最も幅を効かせていた有力貴族であったが、天正・慶長両使節のローマ滞在時に焦点を当てて両家の文書の調査を進めてみると、コロンナ家文書では兼ねてより日本関連史料が多く見つかっている一方で、オルシーニ家では一切見つからないという結果を得た。換言すれば、同規模の有力貴族の史料群を調査することで、日本情報に対するコロンナ家の積極的な姿勢が、逆説的に浮き彫りにされたと言える。また、ヴァチカン図書館では、17世紀にローマで勢力を強大化させ、教皇ウルバヌス8世を輩出したバルベリーニ家の文書より、慶長遣欧使節のローマ入市式について論じた政治論文を新たに確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロンナ家やバルベリーニ家の文書群において新史料を確認し、オルシーニ家文書とコロンナ家文書の比較により、17世紀当時の有力者間で異文化情報に対する選好みが存在していた可能性を見出すことが出来たことにより、本研究は1年目の段階としてはおおむね順調に進展していると言える。しかしながら、バルベリーニ家を中心とした他の有力者の文書群、とりわけ書簡史料の調査には、着手していない部分もあるので、その点は次年度以降の課題として取り組む必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は、ローマ近郊の有力者の書簡史料を中心に調査を進めてきた。今年度はバルベリーニ文書等、前年度からの調査を継続するとともに、ローマ以外の地域の有力者の書簡史料調査にも着手する。とりわけスペインの支配を受けるなど複雑な文化土壌を持っていたナポリ及びその近郊活動していた有力者の書簡資料にも調査対象を拡大してきたい。具体的には、ナポリ国立文書館をはじめとしてナポリ周辺に点在する複数の公立文書館を調査対象に加え、文献調査を進めて行く予定である。本年度は以上のように、前年度の積み残しであるバルベリーニ文書の調査、ナポリにおける文献調査という方向性を以て史料収集を進め、それらをデジタルアーカイブ技術を用いた分析にかけていく予定である。その際に得られた研究成果は、査読論文への投稿や学会発表などで積極的に発信していく。
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Causes of Carryover |
2020年1~3月にかけて、イタリアにおいて45日程度の文献調査を予定していたが、コロナ禍で中止を余儀なくされ、前年度の交付金を本年度に持ち越しせざるを得なかった。
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Research Products
(1 results)