2020 Fiscal Year Research-status Report
イタリア都市貴族と日本人―異文化との直接的邂逅とイメージの受容―
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19K13321
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
小川 仁 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (70827849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慶長遣欧使節 / 天正遣欧使節 / コロンナ家 / ロレンツォ・クラッソ / 『著名武将列伝』 / ナポリ / ローマ / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、以下の2つの事項について研究活動を展開した。 新型コロナウィルスの流行により、イタリアでの文献調査を行うことは出来なかったが、一昨年度にコロンナ文書館で収集した史料(日本関連記述を含む16世紀ポルトガル外交史に関する論文、日本に関する地理情報が含まれる地理書)や、ヴァチカン図書館バルベリーニ文書で確認した史料(慶長遣欧使節ローマ入市式の描写を含む政治論文)を中心に翻刻と分析作業に従事した。これらの分析作業については、AI翻刻技術であるTraskribusで翻刻作業を進め、TEI(テキスト・エンコーディング・イニシアチブ)により、デジタルアーカイブ化したうえで、メタ情報抽出に着手している。 一昨年度はローマを拠点として活動していた貴族の史料を中心に調査を進めたが、当該年度は、調査・研究対象の枠を広げ、17世紀当時、スペインの支配下にありながら様々な情報が行き交っていたナポリに着目し、当該都市の貴族・知識人の日本受容についての研究にも着手している。とりわけ現在は、ナポリ近郊ピアヌーラの貴族でありながら、弁護士、文筆家として活躍したロレンツォ・クラッソ(Lorenzo Crasso, 1623-1695)が、1683年にイタリア語で著した『著名武将列伝』にスポットを当て、著作内でクラッソが書き記している豊臣秀吉と徳川家康の評伝から、クラッソの日本受容について研究を進めている。当該著作には、秀吉と家康の肖像画も付されており、これらを総合的に分析しつつ、「ナポリ貴族における日本イメージの受容」に関する論文を執筆している最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度に収集した史料をデジタルアーカイブ技術を取り入れた分析を含め、多角的な視野から研究を進めている。また、ナポリの貴族の異文化受容も考察対象に加えることで、当該研究課題がより広範で多面性を持った研究へと仕上がりつつある。 新型コロナウィルス流行により、海外での文献調査がままならない状況にありながらも、当該研究課題は、上記の理由を以て、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
状況次第ではあるが、新型コロナウィルスの流行に終息の兆しが見えるようであれば、イタリアでの文献調査を実施し、とりわけ、ナポリにおいてロレンツォ・クラッソに関する裏付け史料の収集に努める。 デジタルアーカイブ関連技術を用いた史料解析を一層推進するとともに、クラッソについての論文を最終年度内に査読付き論文雑誌に投稿する。 そして、上記を体系的に纏上げ、その成果の書籍化の検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していたイタリアでの文献調査が、新型コロナウィルスの流行により、全く出来なかったため、その旅費分が、次年度使用額として生じた。状況次第ではあるが、コロナ禍が終息すれば、速やかに海外調査を実施し、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する予定である。
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