2019 Fiscal Year Research-status Report
近世後期出羽国村山郡の大名飛地領に関する基礎的研究
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19K13327
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤方 博之 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (40727674)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 出羽国村山郡 / 飛地領 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非領国地域の出羽国村山郡に所在した、佐倉藩堀田家の飛地領(46ヵ村、約4.1万石)を分析対象とする。飛地領内の史料を把握・調査する段階から着手し、それら史料の分析を通じて、近世後期の飛地領における地域運営と、堀田家による支配の実相を究明しようとするものである。 2019年度はまず、既に調査に着手している文書群(村木沢文書、蔵王上野文書、下宝沢地区文書、会田家文書)の、写真撮影と分析を行う計画であった。これについては約1100コマの撮影を行うとともに、収集した画像を用いた分析、特に、年貢米の流れを知るための年貢皆済目録、村内外の課題を掴むための御用留・願書留の類を対象として分析を行った。このうち年貢皆済目録の分析については、上廣歴史資料学研究部門研究報告会(2019年4月)にて報告を行った。御用留・願書留については、分析成果を山形県地域史研究協議会大会(2019年7月)にて報告し、さらにその内容を原稿化して『山形県地域史研究』45号に寄稿した。加えて、蔵王上野文書のなかの願書留を取りあげて史料紹介原稿を発表した(『山形市蔵王上野文書目録』)。 また、未整理の史料群について、研究協力者に仲介を依頼してアクセスする計画であった。この点については、山形市内のある地区に区有文書が伝存している情報を得た。調査実施へ向けて、2019年度中に仲介者や史料管理者と面談を行い、2020年度中の実施について協議している段階である。 さらに、分析に際して注目すべき史料を選び、史料紹介原稿として公表することを目指して翻刻に着手することを計画していた。これについては、「万手扣」(会田家文書、嘉永2年、山形大学附属博物館寄託)をテキストとして選定し、既に約8割の翻刻を済ませている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、(ア)調査着手済みの史料群の分析、(イ)未整理文書群の調査着手を模索、(ウ)史料紹介原稿の準備着手、という3点を進める計画であった。 (ア)については、分析成果を複数発表する機会を得た。まず上廣歴史資料学研究部門研究報告会(2019年4月)にて、支配の要点である年貢米の取り扱いについて報告を行った。山形県地域史研究協議会大会(同年7月)では、村側の願書とその背景について報告した。後者は原稿化して『山形県地域史研究』45号に寄稿した。また、村側が提出する願書については、史料紹介を1本執筆した(『山形市蔵王上野文書目録』に寄稿)。 (イ)については、調査候補となる文書群を絞り込み、仲介者を通じて史料管理者との折衝を行う段階まで至ることができた。(ウ)については、取りあげる史料を選定し、約8割の翻刻を済ませている。 このほか、本研究課題へのアプローチの一環として、山形藩家臣の家文書の調査・分析を進めた。その成果として目録を刊行し、研究基盤を整備することができた(『山形市旅篭町 大久保家文書目録』)。 以上のことから、2019年度の本研究課題の進捗状況は、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、調査着手済みの史料群の分析を継続し、分析成果の原稿化に着手する。現段階では、年貢米の流れを主要なテーマとする計画である。また、未整理文書群の調査に着手し、写真撮影・分析を本格化させることを目指す。 さらに、前年度より着手している史料紹介原稿を完成させ、紀要類に寄稿する。
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Research Products
(4 results)