2019 Fiscal Year Research-status Report
古代・中世の除目研究の基盤形成とその政治制度史的考察-三条西家の除目書を中心に-
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19K13331
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
志村 佳名子 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (00759665)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 除目 / 三条西家 / 儀式書 / 故実 / 宮廷儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の古代・中世に行われた官職の任命儀礼である除目の儀式内容とその作法を記す史料(除目書)の形成過程の検討から、古代・中世における朝廷の政治制度を解明しようとするものである。具体的には、除目儀式の内容を分析し、その政治的意義を明らかにすることと、未翻刻史料を翻刻して解説とともに公表することで、除目研究の基盤を築くとともに、古代・中世における朝廷の政治制度を解明する新たな研究視角を確立することを目指すものである。 令和元年度は、三条西家が書写・所蔵した除目儀式書の収集・整理・分析を中心に、除目儀式の内容の検討を行った。具体的には、明治大学中央図書館所蔵の『除秘鈔』および『除秘鈔附』という除目書について、検討を進めた。『除秘鈔』については、近年三条西家旧蔵の除目書であることが判明したが、『除秘鈔附』についても詳細な分析を行った結果、三条西家の旧蔵であることが確定的となった。それをふまえ、『除秘鈔附』の翻刻と史料的性格の検討を進め、全文の翻刻が完了した。 また、史料の内容に関して、当該史料に引用される除目の申文と『大間成文抄』引載の申文との比較や、登場する人名の比定を進め、書写年代や作成年代について検討した。加えて、九条家本『春除目抄』との儀式次第の比較検討を行い、除目作法の展開過程について整理した。 上記のように、史料の翻刻・解釈と並行して宮廷儀礼としての除目儀式の解明を進め、研究成果を三条西家の除目書の影印本として公表する準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初一年目の課題として計画していた三条西家旧蔵の除目書の検討について、国文学研究資料館所蔵『除目抄 下』等の除目書の検討は予定よりも進みが遅くなっているが、『除秘鈔附』に関しては、全文翻刻が完了し、解題と合わせて公表する準備を整えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、摂関家が書写・所蔵する除目儀式書との比較・考察を中心に据える。筆頭公卿として除目の執筆(除目儀の責任者)をつとめる家柄である九条家・一条家・二条家といった藤原摂関家の中心をなす家が保有する除目書について、九条家本『春除目抄』を中心に検討する。宮内庁書陵部所蔵『春除目抄』『秋除目抄』『春除目抄・中夜』、尊経閣文庫所蔵『春除目抄』などを調査・分析し、三条西家本との比較・検討によって、除目作法の二大流派である九条流と花園流の特色を明らかにする。 上記を主軸に、宮廷儀礼としての除目儀式の解明を一層推進する。
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Causes of Carryover |
当初、年度末の3月中に史料の調査で出張を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、出張が不可能になり、急遽残高を物品費(書籍購入費)に充当したが、次年度使用額が生じることになった。 次年度使用額は、令和2年度請求額と合わせて、消耗品費として使用する予定である。
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