2020 Fiscal Year Research-status Report
『日本霊異記』の史料論的研究―東アジア仏教説話の比較―
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19K13342
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| Research Institution | Keio University |
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Principal Investigator |
藤本 誠 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (60779669)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 日本古代仏教史 / 東アジア仏教 / 日本霊異記 / 東大寺諷誦文稿 / 中国仏教説話 / 地方寺院 / データベース |
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| Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、九世紀前半に成立した日本最古の仏教説話集として知られる『日本霊異記』について、東アジア仏教世界の中における位置づけ、古代における説話集編纂の歴史的意味、その背景にある同時代の仏教活動の実態を明らかにするため、研究実施計画に基づき、以下の三つの視点からの基礎的作業を同時並行的に進めた。
①仏教説話の研究…前年度に引き続き、東アジア仏教世界の中での位置づけを明らかにするために、『日本霊異記』との比較研究のための中国仏教説話として、『金蔵論』『金剛般若経集験記』『冥報拾遺』などの史料収集を行い、そのデータベース化を進めた。当該年度のデータベース化の作業から『日本霊異記』説話と関わる重要な用語や話型の把握ができた。
②仏教活動の実態研究…古代の地域社会における仏教活動の実態を示す史料を収集し、多様な視点から以下の考察を行った。第一に、古代日本の説法と法会との関係を検討し、八世紀後半以降には、地方寺院で催される盂蘭盆会や悔過などの追善仏事における法会と説法を通じて、地域社会に仏教信仰が浸透したことを明らかにし、論文として発表した。第二に、前年度に引き続き、古代地方寺院（特に郡名寺院）と村堂における仏教活動とその機能についての検討を行い、論文として公表予定である。
③仏教思想の研究…今年度は『日本霊異記』を中心に仏教思想の研究を進めた。主に『日本霊異記』の編纂思想について、中国の六朝隋唐期の応験記・仏教説話集・僧伝の序文の思想との比較研究を行い、『日本霊異記』と中国仏教説話集の同質性と異質性について考察した。この内容については、これまでの研究の中間報告として企画・開催した2020年度仏教文学会12月例会シンポジウム「東アジアの中の『日本霊異記』」において報告を行った。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の作業のうち、①の仏教説話の研究では、史料の読み込みと分類作業がやや遅れているが、六朝隋唐期の仏教説話史料の収集とデータベース化はおおむね順調に進んでいる。また②の仏教活動の実態研究については、考古学による地方寺院や村堂の発掘成果の収集がやや遅れ気味であるものの、文献史料に基づく仏教活動の具体的な研究については進展している。③の仏教思想の研究については、今年度のシンポジウムの開催により、前進した部分があり順調である。全体としては、問題なく、おおむね順調に進んでいると判断される。
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| Strategy for Future Research Activity |
来年度は、①の仏教説話の研究では、中国仏教史料の収集とデータベース化に加え、史料の読み込みと分類を重点的に進める。②の仏教活動の実態研究については、『東大寺諷誦文稿』の考察を深めるとともに、考古学による発掘成果や出土文字資料なども含めて分析していく。③の仏教思想の研究については、今年度のシンポジウムの報告内容をまとめ、シンポジウムにおける討論の成果を踏まえて、さらに考察を深めていく。
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| Causes of Carryover |
研究課題に係る書籍・史料の購入及び、史料調査・実地調査等のために用いる。
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