2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K13361
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
渡井 葉子 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (40752382)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メソポタミア / バビロニア / 女性史 / 社会経済史 / 楔形文字学 / プロソポグラフィー / 新バビロニア時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、紀元前7世紀後半から紀元前5世紀初めのバビロニアの女性の経済的立場・活動の体系的研究を目的としている。2020年度は、社会経済文書の読解およびこれまで作成したデータベースを基盤として、主に都市富裕層に属する結婚した女性たちが、夫や家族の経済にどのような影響を与えたのかについて考察した。その研究結果をまとめた「紀元前1千年紀バビロニアの都市民の家族における女性の役割」と題する研究報告を、第62回オリエント学会(11月6日、オンライン開催)および中央大学人文学研究所の研究会(9月12日、オンライン開催)において行い高評価を得、また質疑応答によって有意義な指摘や助言を得ることができた。本研究発表では、さまざまな事例を比較検討することにより、第一に結婚に際して妻の実家から夫の家に贈られる嫁資の問題、第二に結婚した女性による夫や家の経済活動への関与のあり方を論じ、ある程度の富裕層に属する家の女性たちが家庭内で置かれていた立場・状況および果たした役割の多様性を示した。本発表を基盤とする論文を、2021年に中央大学人文学研究所叢書より出版予定の論文集『歴史の中の個と共同体』(仮題)に掲載するため、現在準備中である。 さらに、新バビロニア時代の領域支配に関する英語論文1本が出版され、紀元前7-6世紀頃に繁栄したエギビ一族の家に関する英語論文および紀元前7-5世紀前半に流通していた銀の種類に関するフランス語論文を執筆、提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症拡大により海外での資料調査、研究打ち合わせ、学会・研究会参加などができなかった。また論文が掲載される論文集や雑誌などの編集が進まず、なかなか出版されないといった状況が複数ある。
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Strategy for Future Research Activity |
①主にバビロンとその周辺都市で作成された、いわゆる「私的文書」に登場する女性のデータの整理を行う。本研究計画では、データベースのオンライン公表と、学術書としての出版を目的としているが、そのためのデータベース整備を進める。 ②8月までに論文集『歴史の中の個と共同体』(仮題、中央大学人文学研究所叢書)に掲載予定の論文「紀元前1千年紀バビロニアの都市民の家族における女性の役割」(仮題)を執筆する。同内容の論文を英語でも執筆し、学術誌に投稿するか、もしくは①で述べた学術書の論考部分の一部としたい。
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Causes of Carryover |
資料収集、学会・研究会参加、研究打ち合わせ等のため、年に数回海外に渡航する予定であったが、COVID-19蔓延によって海外への渡航ができなくなったことから、かなりの次年度使用額が生じてしまった。その分は学術書の出版費用に使用したいと考えている。
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