2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13365
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川西 裕也 新潟大学, 人文社会科学系, 助教 (30736773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 朝鮮史 / 古文書 / 様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には、高麗・朝鮮時代の国王文書(国王が発給主体となる文書)における押印の位置について分析を加えた。 高麗・朝鮮時代の国王文書における印は、基本的に文書末尾の発給年月日の箇所に押すように規定されていた。当該時代の国王文書の事例を網羅的に蒐集して検討した結果、高麗時代から朝鮮時代にかけ、押印の位置が上昇するという傾向を見いだすことができた。その要因は必ずしも明らかでないが、この押印位置の変化については、同時代の中国(元・明)の公文書から影響を受けた可能性が推測される。 なお本研究を進める過程において、韓国安東市の太師廟に現在所蔵されている、高麗時代の国王文書「鄭光道教書」(14世紀発給)の印が、同時代の国王文書としてはあり得ない位置に押されているという事実を発見した。これを手がかりとして、戦前に撮影された「鄭光道教書」のガラス乾板写真を検討したところ、そこに写されている文書が、現存する文書とは異なる、もう一つの「鄭光道教書」であることがわかった。また、ガラス乾板写真の文書に押された印は、13世紀、元が高麗に下賜したパクパ字「〓(馬+付)高麗国王印」であるという重要な事実も明らかとなった。この成果をもとに、その他の関連史料を参考としつつ、現存する「鄭光道教書」を分析した結果、同文書は戦後に韓国で作られた写しである蓋然性が高いことがわかった。以上より、国王文書における押印位置が文書の真偽判定にも有用であることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は特に支障なく当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続いて、古文書の様式論的研究を進める。特に、朝鮮時代の公文書における花押や年号表記の実態を中心に検討する。
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