2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13365
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川西 裕也 新潟大学, 人文社会科学系, 助教 (30736773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 朝鮮史 / 東洋史 / 古文書 / 壬辰戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引きつづき、日本国内に所蔵される朝鮮古文書の調査・分析を行った。特に、壬辰戦争(文禄・慶長の役)時に発給された文書に焦点をあてることとし、1595年6月、朝鮮の「礼曹司」が加藤清正に発給したとされる「朝鮮国礼曹司書簡」を取りあげて研究を進めた。本文書は、朝鮮人が清正の武勇・仁徳を称賛したものとして江戸時代より広く知られてきた。しかし、「礼曹司」という名称からもわかるように、本文書は明白な偽文書である(朝鮮の外交担当官庁は「礼曹」)。本文書が、いつ誰によって、どのような目的で作成されたのかについては明確でないが、(A)壬辰戦争中における日本人・朝鮮人の合作、(B)壬辰戦争後における日本人・朝鮮人の合作、(C)江戸時代における日本人(特に対馬人)の作成、という三通りの仮説を提起することができる。本研究の結果は、「「朝鮮国礼曹司書簡」と加藤清正」(『九州史学』195)として公表した。 また、壬辰戦争時における清正の動向を窺うため、『龍蛇雑録』という史料に載録されている、清正と朝鮮人との会談記録に関する検討を進めた。その成果の一端は、「〈訳註〉壬辰戦争における加藤清正の会談記録(一)」(『環日本海研究年報』29)として刊行した(続刊予定)。 研究期間全体を通じて、①朝鮮の公文書における押印位置の分析、②朝鮮後期(17~19世紀)の御諱・御押・御筆資料(国王の御諱・御押が記された資料や、御筆によって書かれた資料)に対する廃棄方式の実態解明、③壬辰戦争時に発給された朝鮮古文書の事例研究、という成果を得ることができた。2020年度以降における感染症拡大により、韓国の図書館・研究機関での調査が不可能となったため、本研究課題は大幅な内容変更を余儀なくされた。しかし、日本国内所蔵の朝鮮古文書の調査・分析を行った結果、当初の予想を越える大きな成果を挙げることができたと思われる。
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