2019 Fiscal Year Research-status Report
外交史料からみる近代タイの文化政策: 絶対王制期を中心として
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19K13367
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日向 伸介 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (60753689)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タイ / 文化政策 / 外交史 / フランス / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア大陸部に位置するタイ王国は、日本と同様、君主制のもとで近代国家を建設するとともに、植民地支配を免れた数少ない非欧米諸国のひとつである。現在も社会全般において大きな影響力をもつ王室に対する関心は高く、その政治的・経済的側面に関する研究が国内外で蓄積されている。これに対し研究代表者は、現在あるような王室への権力集中の基盤が形成された近代国家形成期=絶対王制期において、タイの王権や王国のイメージが文化政策を通して創出された過程を明らかにしてきた。 本研究課題は、これまでの研究でおもに依拠してきた教育省およびダムロン親王関連の史料にくわえ、タイの文化政策に影響を与えたフランス・イギリス関係の外交史料を利用することにより、従来とは異なる角度から絶対王制期における文化政策の実態を明らかにしようとするものである。 令和元年度(初年度)は、両国の各史料館・図書館で調査をおこなった。その結果得られた主要な成果は次のとおりである。まず、フランスの国立海外文書館では、1917年にフランス極東学院を離れてタイのワチラヤーン図書館館長に就いたジョルジュ・セデスの動向に関する史料を確認した。同外交史料館では、特命全権公使という立場でタイの文化政策にも影響を与えたフェルナン・ピラの動向に関する史料を確認した。次いでイギリスの国立公文書館では、1907年~1932年にかけて在シャム(タイ)公使館からイギリス本国に送られた一連の報告書を確認した。英国図書館では、1910年代以降のタイの文化政策の中心人物であったダムロン親王が内務大臣を解任された経緯に関する史料を確認した。これらの史料はすべて、本研究の基礎をなすものである。 研究発表としては、「近代タイにおける「王都」と「古都」:ラタナコーシン(バンコク)王朝の行幸・儀礼・考古学行政に着目して」と題する口頭発表を10月26日に京都大学人文科学研究所でおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者はこれまで、タイの図書館・公文書館が所蔵する史料を中心に研究をおこなっており、本研究課題において初めてフランス・イギリスの関連機関を利用した。そのため初年度は、まず関係史料の全体像の把握を目指したが、上記であげたとおり、研究課題に直結する史料を閲覧・入手することができた。また、そこで得られた知見を加味し、近代タイの行幸・儀礼・考古学行政に関する口頭の研究発表をおこなった。 以上から、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で列挙したものにくわえ、初年度に大量の史料を入手(撮影)したので、引き続き整理・分析をおこなう。そのうえで、絶対王制期タイの文化政策をとりまく国際関係について、タイ側の主要人物と外国人顧問官の関係に焦点をあてた論文をまとめる準備を進める。 現地調査については、初年度に得られた知見をもとに史料収集を本格化させる予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、今年度中に海外の図書館・史料館を利用できるかどうか全く分からない状況となってしまった。対応策として、刊行史料で補える部分がないか再検討するとともに、研究対象を文化政策に限定せず、その前提となる国際関係の解明に視点を広げていく。
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Research Products
(1 results)