2020 Fiscal Year Research-status Report
外交史料からみる近代タイの文化政策: 絶対王制期を中心として
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19K13367
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日向 伸介 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (60753689)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タイ / 文化政策 / 外交関係 / イギリス / フランス / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の主要研究実績は、絶対王制期のシャムにおける教育-文化政策に関連して、「1910年「シャム国の教育に関する勅語」公布計画:経緯と思想的背景」と題する論文を執筆し、査読論文として刊行したことである。同論文は、日本の「教育ニ関スル勅語」(1890年)の英訳版を参考に起草されたシャムの教育勅語について、その背景と思想的性格を明らかにしたものである。イギリスで教育を受けた文部官僚のひとりが、日本との政体の違いを認識しつつも、「教育勅語」の理念に有用性を見出し、国王への忠誠心を涵養するためのメディアとして利用しようと試みたことは、絶対君主制期シャムの支配層の対外・対内認識を知る上で重要な事実である。シャム版教育勅語の公布計画があったことはタイ史研究の分野では比較的よく知られており、英語・タイ語の一部の先行研究が基本的事実を整理している。しかし、日本語原版・英訳版の教育勅語との比較分析は、これまで全くおこなわれてこなかったことから、独自性の高い研究といえる。 また、対外関係に着目する本研究課題の問題意識と関連して、「外来人国家」という独自の視点からタイの政治文化を捉えようと試みた赤木攻の近著『タイのかたち』(2019年)について日本タイ学会で書評報告をおこなった。さらにその内容をベースとした書評を執筆し、同学会の学会誌に投稿した。 くわえて、1932年以前のシャムにおける外国人顧問官について、前年度に引き続き関連文献の調査をおこなうとともに、基礎データベースの作成作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、2020年度に国外の公文書館における本格的な史料調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のためその作業を進めることが全くできなかった。しかし、2019年度の予備調査で収集した史料と二次資料をもとに、外交関係を視野に含めた上記の研究成果を収めることができたので、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の問題のため、国外での史料調査は2021年度も引き続き困難であると予測される。そのため、2020年度に引き続き、初年度に収集した史料と二次資料をもとに論文を執筆し、外交関係を視野に入れた文化政策史研究を推進する。
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Research Products
(2 results)