2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13373
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
久保 茉莉子 成蹊大学, 文学部, 助教 (90807900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 戦時 / 刑事裁判 / 刑法 / 刑事訴訟法 / 中国近現代史 / 中華民国 / 中国法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.清末から日中戦争勃発前夜までの中国における刑事法制定過程と刑事裁判の実態を分析した単著を出版した。本書は博士論文及び学術論文を加筆修正してまとめたものである。清末民国期を通じて外国法を参照しつつ自国の現状に適した刑事法の制定が模索されたことを示し、とりわけ国民政府期には、人材養成の進展を背景に、国家の定めた法律制度にもとづき国家機関や法律専門家が訴訟を進行する形式が確立されつつあったことを明らかにした。そして事件関係者など法律の専門知識を持たない人々も積極的に訴訟に参加したことで、新たな刑事法が都市部を中心に、着実に中国社会に浸透していったことを指摘した。(久保茉莉子『中国の近代的刑事裁判―刑事司法改革からみる中国近代法史』(東京大学出版会、2020年6月) 2.清末~現代の中国・台湾の刑法の変遷を論じた黄源盛『晩清民国刑法春秋』(犁齋出版、2018年)の書評を執筆・発表した。本書は、台湾の代表的な法制史学者である著者の長年の史料編纂と実証研究の内容をまとめあげたものである。清末民国期における刑法の編纂過程や運用実態について、外国法との比較や戦後台湾の法状況とのつながりも踏まえて論じている。(久保茉莉子「黄源盛著『晩清民国刑法春秋』」『東洋学報』102巻2号(2020年9月)、pp155-162) 3.日中戦争期に法学議論の場がいかに変容したのか、法学者たちがいかなる議論を展開していたのかを分析し、研究会で報告した。日中戦争勃発後、上海や重慶において法学者たちは戦前と同様の体制を維持するのは困難になりつつも雑誌の発行継続に努め、様々な議論が展開されていたことを示した。(「日中戦争期における中国法学界」、京都大学人文科学研究所「近現代中国の制度とモデル」研究班例会、2021年1月22日)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大により国内外での史料収集が困難となったが、国会図書館の所蔵文献やインターネットを利用して史料を分析することができた。当初の研究方法を大幅に変更し、従来に比べて不便を感じたものの、結果的には単著を出版し、研究会で報告することができた。研究会で報告した内容は、今後論文として投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき国会図書館所蔵文献とインターネットで閲覧・入手可能な史料を利用して研究を進める。また可能であれば京都大学などに所蔵される文献を閲覧する。海外での史料収集は引き続き困難であることが予想されるため、中国で出版された法律関連の史料集を購入し、戦時の法律や裁判の実態を分析する。
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Causes of Carryover |
2020年度は2019年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大により国外での史料調査が不可能であったことに加え、京都をはじめとする他府県での史料調査も難しくなったため、本来旅費として使う予定であった費用を使用できなかった。2021年度も史料調査旅行は実施できない可能性が高くなってきたため、次年度使用額を使って史料集を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)