2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K13374
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
森 万佑子 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (30793541)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 朝鮮政治外交史 / 交隣 / 事大 / 近代東アジア国際関係 / 中華 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代朝鮮の対外関係について、朝鮮がいかに条約を基軸とした近代国際関係に対応し、外交を近代化していったのかについて明らかにするものである。その際、本研究は、朝鮮の外交事例を抽出し、それらがいかに西洋近代を受容していたか否かをはかるような従来の研究で多くとられた観点ではなく、東アジア在来の中華秩序における事大交隣と朝鮮の関わり、およびそうした既存の秩序が条約と出会うことでいかに変容し、転換していったのかという観点から議論するものである。 これまでも、西洋近代の条約体制よりも、東アジアの在来の体制といえる中華秩序にまず着目し、そこから議論を構築する研究はいくつかなされてきた。ただ、秩序の中心である中国について関心が集中した。そのため、中国から見た他国・他地域との関係性の研究が多く、あるいは朝鮮に関しても、朝鮮の知識人や儒者の思想を中心テーマに据えて、思想的系譜を分析する研究が主流であった。本研究は、そうした研究の成果に学びながらも、アメリカ、日本、天津といった中華秩序の周辺ともいえる場に対する、朝鮮(朝鮮政府)の見方・視線を明かにする。そうした中華秩序の周辺に朝鮮がいかに関わったのかについて研究することで、朝鮮における事大交隣とその分岐、そして近代外交の形成について考える。そうしたところに先行研究との差別化があり、意義もあると考える。 また、本研究はこれまで十分に利用されていなかった史料の活用や、新史料の発掘にも力を入れている。これまでに十分に知られていなかった史実に言及し、一見微細と思われる史実からも、それを蓄積することで、朝鮮の外交体制全体に関わる議論を構築しようと試みている。そして、そうした史実や議論の積み重ねを経て、朝鮮近代史から近代東アジア国際関係に対する新たな枠組みの提示を目指すところに、本研究の最終的なねらいがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度に引き続き、コロナウイルス感染症拡大のため、国内外での調査・研究が叶わず、当初予定した史料収集は行えなかった。しかし、オンラインで国際学会で発表したり、データーベース等で入手できる海外の論文や史料を駆使したりして、論文を一定程度まとめることができた。そうした過程で、「交隣と交易の関係」という当初予期していなかった新たな課題も生まれ、経済制度、とくに税制についての理解を深める必要を感じた。 他方、昨年度に立てた「海外渡航が叶わなかった場合の計画」に即して、入手できる論文や研究書を通して研究を進めた。その延長上で、対日関係については、史料が比較的に入手しやすい韓国併合まで時期を広げて研究をすすめた。その結果、韓国併合の過程で朝鮮側が「交隣」の概念を敷衍して用いていたという当初予期していなかった史実の発見もあった。この点は、朝鮮の近代外交の形成という本研究の核心テーマを考える上で有益な発見であり、引き続き、韓国併合の時期まで研究対象を広げて研究を深めることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航が叶えば、当初の計画通り、韓国と中国、アメリカに行き史料収集を行い、史料分析を経て、論文にまとめる。 しかし今後も、コロナウイルス感染症拡大の影響で、当初計画していた国内外での史料収集や研究が叶わない可能性が高い。 その場合は、次の二つの研究を進める。一つは、「交隣と交易」について近代朝鮮と中国の税制を調査し、当初の研究計画を補いたい。もう一つは、「韓国併合過程における交隣の議論」をテーマに、「交隣」という前近代的な概念が韓国併合という近代帝国主義的な事象と、いかに交わったのかについて分析し、当初の研究計画の対象を広げるとともに、より深度のある議論を展開させたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症拡大により、研究計画時に予定していた国内外での史料収集ができず、参加を予定していた国内外の学会もオンライン開催になったことにより、旅費の支出がなくなったため。
今年度、国内移動や海外渡航が認められ次第、旅費として使用する予定である。
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