2020 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半のインドネシアにおけるイスラーム運動とアラブ地域
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19K13380
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 元樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (60732922)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東南アジア史 / インドネシア / イスラーム / アラブ地域 / エジプト / 留学 / マラヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀前半のインドネシア(オランダ領東インド)におけるイスラーム運動について、アラブ地域との関係に着目して考察するものである。具体的な研究内容としては、①伝統派ムスリム、②カイロへの留学という2つのトピックを取り上げる。それらのうち、2020年度は昨年度に引き続き後者を中心に作業を進めた。 当該年度は海外での資料調査ができなかったため、これまでに収集した資料の整理と分析、それに基づいた論文の執筆に専念した。まず、京都大学東南アジア地域研究研究所発行『東南アジア研究』58巻2号に論文「イスラームの文字、マレーの文字:独立期インドネシアにおけるジャウィ復活論とマラヤとの関係」を寄稿した。この中では、20世紀前半におけるカイロ(及びメッカ)のインドネシア人留学生とマレー・イスラーム世界への帰属意識についても論じた。次に、立教大学アジア研究所の『なじまぁ』の特集号に昨年度のシンポジウムの報告に基づく論考「モハンマド・ラシディの「知識を求める旅」:20世紀前半におけるインドネシアからカイロヘの留学」を執筆した。こちらは現在校正の段階であり、近日中に出版される予定である。この論文では、インドネシア共和国の初代宗教大臣の経験を事例に、カイロにおけるインドネシア人留学生の学習や生活の実態について検討した。当時のインドネシアのイスラーム社会がカイロ留学に求めていたものは、近代性であったが、留学生の大半が在籍したアズハルはその要望に充分に応えられず、優秀な留学生は他の教育機関に移ったことを指摘した。その他、インドネシアのイスラーム運動がアラブ地域のイスラーム知識人から受けた影響に関する論文の執筆に取り掛かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度はコロナウィルスの感染拡大の影響で、当初予定していたインドネシアとオランダでの資料調査を行うことができなかった。しかし、これまでの調査である程度の資料を収集していたので、それに基づいて研究成果を提示することができた。ただし、課題としてあげた①伝統派ムスリムについての研究を進めるには、まだ資料が充分に収集できていない。資料の不足をどのように補うのか考える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、2021年度にオランダとインドネシアで資料調査を行うことになっているが、世界的なコロナウィルスの感染拡大の影響で少なくとも夏までは海外への渡航は不可能であると考えられる。もし可能であれば、2022年2月から3月にインドネシアまたはオランダで資料調査を行いたい。昨年からの所属先である京都大学にも相当量の関連資料が所蔵されているので、それを活用することも検討したい。研究成果としては、2021年度の前半までに英語の論文を執筆し、海外の雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
世界的なコロナ・ウイルスの感染拡大の影響により、予定していた海外での資料調査ができず、旅費を使いきれなかった。次年度は、可能であれば海外での資料調査に使用するほか、資料整理のための機材(スキャナーなど)を購入するための物品費に充てることも考えている。
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Research Products
(1 results)