2021 Fiscal Year Research-status Report
フランス絶対王政末期における身分社会への包摂をめぐるポリスの実践
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19K13383
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
松本 礼子 専修大学, 文学部, 講師 (60732328)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリス / 絶対王政 / 18世紀 / 社会的周縁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は18世紀パリを対象とし、フランス絶対王政期の統治構造の特徴である「社団的編成」の埒外に存在した周縁的社会集団に着目し、都市統治一般を意味するとともに秩序維持を担っていた「ポリス」側が彼らをいかに社会内部に包摂あるいは排除したのかの解明を目的とするものである。 令和3年度前半は引き続き、令和2年度までにフランス国立図書館で収集した史料の整理、そして解読と分析を行った。特に、絶対王政の基本的な社会構造「社団的編成」から宗教的に逸脱した社会集団としてのユダヤ教徒の統治をめぐるポリス側の記録である。同時に、前近代フランスにおけるユダヤ教徒の政治的・社会的位置づけの変遷を把握するため、ユダヤ教徒についての先行研究を網羅的に把握することに努めた。 そのうえで、本課題代表者は夏期休暇中にフランス国立図書館等に赴き、史料拡充に努める予定あったが、令和2年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症拡大のため令和3年度も渡仏は断念した。フランス国立図書館では、手稿史料電子化が飛躍的に進んではいるものの、本研究課題に必要な史料の一部は現地でのみ閲覧可能であったため、令和元年の現地調査で入手済みであった史料の解読と分析と平行し、今後の現地調査で閲覧すべき史料リストの作成に努めた。 令和3年度後半には、本研究会課題の中間報告として、令和4年3月に開催された「日仏歴史学会第10回大会」において研究報告を行った。「社団的編成」の周縁に位置した社会集団「雑業者」「売春婦」「ユダヤ教徒」を取り上げ、ポリス側の実践が、社会への包摂の回路の役割を果たしていたことを考察した。これら史料の分析と考察は、令和3年度の主たる成果であり、当該学会での研究報告の要旨は、令和4年度6月発行の『日仏歴史学会会報』第37巻に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では上記の課題を解明するにあたり、以下の4つの段階を設定している。(1) 統治をめぐる理念・政策の解明 (2) 統治のための技術・実践の解明 (3) 身分社会におけるポリスの役割の解明 (4) 日仏近世比較史への還元。 このうち、(1) については令和元年度までに本研究課題に必要なコーパスを確定し、その大半は令和3年度までに分析済みである。(4)については、令和元年度の史料調査の成果として執筆した論文が、令和4年度出版予定の日仏近世史論文集に掲載予定である。令和元年度末にフランスで開催されるはずであった日仏二国間セミナー「近世身分制社会を考える-フランスと日本の比較から」は、本研究課題の成果を還元する機会ともなっていたが、令和2年度に引き続き、令和3年度も新型コロナウィルス感染症拡大の影響で開催されなかった。(2) については、本課題代表者が既に入手済みの史料の整理と分析を進めることができた。しかし、コロナ禍によって、現地史料調査を延期せざるを得ず、史料の確認と、さらなる史料の発掘・拡充が叶わなかった。とはいえ、令和3年度末の「日仏歴史学会大会」における研究報告の結果、これまでの史料分析と考察に対して、他の研究者のフィードバックを得て、新たな知見をもとに研究の方向性を改めて確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きこれまでの現地史料調査で収集した個別事例に関する史料の精読と分析を進める。フランス国立図書館では手稿史料の電子化が日進月歩であることは先述したが、本研究課題に関連するものは現物でしか閲覧できないものも多く、このままコロナ禍が長引くと研究作業の停滞が懸念される。とはいえ、今後は渡仏および帰国の条件が緩和されるとのことなので、令和4年度は、現地調査でさらなる史料の拡充と、現時点で入手済みの史料についての補足、再確認を行う予定である。また、随時、手稿史料の電子化状況を把握し、インターネット上で閲覧可能な関連資料については可能な限り事前に日本で入手し、現地史料調査の効率化を図る。 また、本研研究課題は令和3年度が最終年度であったが、長引くコロナ禍のため研究期間延長をし、令和4年度が最終年度となる予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度末に予定されていた二国間セミナーに引き続き、令和3年度の現地史料調査も断念せざるを得なかったため、本研究課題の実施期間を延長した。主に渡航費・滞在費にあたる費用を令和4年度に繰越した。 令和4年度の研究費の主たる使用目的は、1. 海外史料調査および国際研究集会参加のための渡航費・滞在費 2.文献・資料の購入 3.第一次史料のデータ化・PDF化 4. 執筆論文のネイティヴチェックに関わる費用である。
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