2022 Fiscal Year Research-status Report
Letters and Social Norms in Hellenistic Egypt
Project/Area Number |
19K13385
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石田 真衣 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (90839375)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ヘレニズム / プトレマイオス朝 / エジプト / 書簡 / 組合 / 共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまで継続してきた嘆願書研究をまとめるとともに、ヘレニズム・ローマ期エジプトにおける私的組合(団体)の活動について調査をすすめた。具体的な研究成果は以下のとおりである。
(1)単著『民衆たちの嘆願:ヘレニズム期エジプトの社会秩序』(大阪大学出版会、2022年9月)を刊行した。本書では、第一に、ギリシア語史料とエジプト語史料の両面からエジプト社会における嘆願とその解決の実態を詳らかにし、第二に、この時代に加速する民族的・文化的混淆の最中を生きる民衆の視点から、ギリシア・マケドニア系を中心とする新興勢力とエジプト系神殿コミュニティを中心とする旧来勢力の関係構築のプロセスを解明することを目指した。民衆たちの行動をつうじて、古代の多文化社会の秩序がいかに維持され、変容したのか、従来のギリシア中心史観をエジプト側から見直し、新しいヘレニズム社会史を提示した。
(2)紀元前後のエジプトにおける団体研究に関する研究動向をまとめた。従来、エジプトの団体は、同時代のギリシア・ローマ史研究の枠組みにおいて語られてきたが、近年ではヘレニズム期以前からの団体結成の慣習にも目を向けるようになっており、この時代の共同体のあり方が捉え直されている。本研究では、団体研究の新たな視角として、紀元前後の地方自治の実態を示すいくつかの事例について検討し、課題を提示した。その成果については、「紀元前後のエジプトにおける社会結合」(『古代文化』75-1〈特輯 古代ギリシア史研究の現在地(1)共同体〉に収録)として刊行予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度と同様、COVID-19の影響により、私的組合の事例研究を実証するための資料調査を円滑に遂行することができなかったため、期間延長を申請した。一方で、書簡研究の一環として嘆願書研究の成果をまとめ、本として刊行することができたのは大きな進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後もCOVID-19や現地情勢の推移を見極めながら、可能なかぎり、資料の収集と分析をすすめる。 (1)ヘレニズム期からローマ期にかけての組合に関するパピルス・碑文史料を収集・調査し、データベースを作成する。 (2)エジプトの地方神殿と私的組合の関わりについて調査する。 (3)組合などのローカルな人的紐帯が、どのように維持されていたのかについて、書簡史料の調査から明らかにする。 以上の調査研究をとおして、ヘレニズム・ローマ期にかけての民衆たちの日常的コミュニケーションとその変容過程について総括する。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の影響によって、予定していた海外調査をおこなうことができなかった。その結果、特定の地域と神殿遺跡を対象とする実地調査ができなかったために、使用残額が生じた。次年度使用額については、海外調査が可能となった場合には、当初の計画通り旅費に充当する。困難な場合は、国内外から史料と文献を入手する費用に充当する。
|
Research Products
(1 results)