2021 Fiscal Year Research-status Report
Royal Navy and Ireland in the early half of the long eighteenth century: An analysis of the letters from the Dublin Government to the Admiralty
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19K13387
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
雪村 加世子 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (60735116)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2024-03-31
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Keywords | アイルランド史 / ブリテン諸島史 / 海軍史 / 海事史 |
Outline of Annual Research Achievements |
第ニ次英仏百年戦争期(1692~1815年)のイギリスにおける海軍組織の発展と活動領域の拡大という現象についてのアイルランドの要素を含めた再解釈が国内外で目指される中、本研究計画は1691~1758年にかけてアイルランド総督府がイギリス海軍省に送った書簡を分析することで、アイルランド統治の担当者らがイギリス全体の海軍政策についていかなる見解を持ち、発展途上段階であったイギリス海軍行政をアイルランド方面においていかに補完しえたのかという問題を明らかにする4年間の研究プロジェクトである。 研究計画2年目にあたる令和3年度は、前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症流行のため、研究計画を大幅に変更した。本務校で教務委員として学部のコロナ対策に従事していたため、予定していた史料の読解が1758年分まで完了しなかった。また、ロンドンでの史料調査やアイルランドでの研究者との交流も実施できなかった。6月に開催を予定されていた第8回国際海事史会議(於ポルトガル)が2022年に延期となり、予定していた口頭報告が延期となった。 その一方で、『西洋史学』に修正の上採用が決まっていた論文「「長い18世紀」前半期のアイルランドにおけるイギリスの海軍行政―キンセイル海軍役人の視点から」の再投稿を2022年2月に完了させた(現在編集部による再審査中)。さらに書簡史料の分析から、アイルランド総督ヘンリ・シドニー(総督在任期間:1692-3年)がアイルランドの沿岸と貿易を敵私掠船から守るべきという見解のもと、国内の役人から届いた書簡をロンドンの海軍省に転送したり、海軍軍艦の艦長らから情報収集したりしていたことが確認できた。 こうした事情により、2021年度は多くの研究費は執行せず、次年度に繰り越した。執行した研究費は研究遂行に必要な文具と書籍の整理に使う物品、研究の背景となる文献の購入に充てられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の流行が続き、予定していた研究活動のうち、国境を越えた移動を伴うものが全て実施できない結果となった。教務委員としての業務など、本務校での学務が非常に多く、研究に割くエフォートが研究計画の時点よりも少なくなった。さらに、感染防止の観点から子供の保育園の登園基準が厳しくなり、体調不良で休まざるを得ないことが増え、3月には子供が保育園で濃厚接触者となったことによる登園自粛もあり、研究時間が削られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年4月に、使うことのできなかった繰越旅費の一部を用いて研究室に常置するiPad proを購入し、学務の合間に史料読解ができるようになった。史料読解のスピードを上げて、3年目前半にアイルランド総督府発・海軍省宛史料の読解を終えることを目標とする。その成果をまずは日本語論文にまとめて『史林』『歴史学研究』等の雑誌に投稿する。また、並行して2014年から現時点までの研究成果を基にした英語論文を執筆開始する。英語論文は3年目の終わりまでに校正業者に出せるように準備する。 2度の延期の結果、第8回国際海事史会議(於ポルト)で2022年7月1日(金)に口頭報告を行うことが決定したが、4日間程度の滞在中に現地で帰国前72時間以内の陰性証明書を取得することが非常に困難であること、また2022年2月に勃発したウクライナ侵攻とこれに伴う原油高で航空便の運航状況が不安定であり、渡航の安全も確保できないことから、オンラインでの口頭報告に切り替えられないか主催者側と交渉する予定である。 4年目には日本語での口頭報告1件、英語での口頭報告1件を目標にしているため、現時点より報告の機会を探して申し込む予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行のため、国外での研究調査活動が全て中止あるいは延期となったため、旅費の次年度使用額が生じている。また、同じ理由で全体的な研究計画の遅延や全世界的な研究活動の停滞が起きたため、購入すべき書籍がさほどなく、物品費も予定よりも少なかった。 繰越予算については既に2022年4月に研究室での史料読解を促進する目的でiPad proを導入するのに約30万円を執行した。残額は今後新型コロナウイルス感染症の流行が終息し、ウクライナをめぐる国際紛争に終結の見通しが立った時点で、史料調査・学会報告の旅費に充てる予定である。
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