2019 Fiscal Year Research-status Report
Gorbachev's CMEA Policy and the End of the Cold War
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19K13388
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤澤 潤 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (90801100)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 冷戦史 / ソ連史 / コメコン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、本研究の初年度にあたることから、先行研究に関する外国語文献の収集を重点的に行った。そのうえで、夏季休暇期間および2月に2回ほど、モスクワのロシア国立経済文書館およびロシア国立現代史文書館で集中的に史料調査を行った。その結果、コメコン首脳会議の速記録や議事録など、多くの未刊行史料を発掘することができた。帰国後に、これらの史料を分析したところ、ゴルバチョフのコメコン政策において、早い段階からモンゴル、キューバ、ヴェトナムなどの非欧州加盟国がそれまで考えられていたよりもはるかに重視されていたことを解明できた。ゴルバチョフは、もっぱらソ連がこれら3国に対する経済支援の負担を担っていることに強い不満を抱き、コメコンにおいてこれら3国に対する経済支援の協調を進めようとして、コメコンでこの問題について繰り返し取り上げようとした。しかし、東欧諸国はこのようなゴルバチョフの押し付けに強く反発したため、コメコンは非欧州加盟国への対応をめぐって協力体制を構築することができなかったのである。 この研究成果をもとに、5月にチェリャビンスク大学(ロシア)で開催された国際シンポジウムでソ連の対モンゴル経済政策について口頭報告を行ったほか、9月にワラヒア大学(ルーマニア)で開催された国際ワークショップや、12月に北海道大学で開催された研究会でコメコン域内の開発途上国に関する問題について報告を行い、今後の課題について多くのフィードバックを得た。これらのコメントをもとに再度史料を分析しなおしたうえで、国内査読雑誌への投稿に向けて、コメコン非欧州加盟国をめぐるゴルバチョフの政策に関する論文を準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モスクワにおける2度の史料調査の結果、ソ連側の政策については計画していた以上に多くの史料を収集することができた。とくにコメコンの首脳会議や総会などの速記録・議事録を早い段階で閲覧・分析できたため、研究の初動は良好であった。また、研究の早い段階で、国際シンポジウムなどでの発表後に世界中のコメコン史研究者から本研究プロジェクトについて多くの助言やコメントを得ることができたことも、研究の進展に好影響を与えた。現在、国内査読雑誌への投稿に向けて準備中の論文もほぼ完成しており、次年度の始めには査読審査のために提出することができる状態にある。 このように、ロシアにおける史料調査をもとにした研究は計画よりも早いペースで進展しているが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、年度末に計画していたドイツへの史料調査が中止になったため、東ドイツや東欧諸国の動向に関する史料の調査・収集および分析が中断を余儀なくされている。そのため、上述の論文でも、東ドイツの動向についてはほとんど触れることができず、もっぱらソ連のコメコン政策を分析したものとなった。 このように、研究計画のうち、ソ連側の政策に関する研究は計画以上に進捗しているものの、東ドイツや東欧諸国の動向に関する分析の準備は停滞していることから、本年度の研究の進捗状況を全体としてみるとおおむね計画の範囲内と言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、できる限り計画通りに研究を進めていきたいが、新型コロナウィルスの感染拡大にともない、研究のために必要不可欠な海外出張等が中止を余儀なくされている。計画では、今年度は6月にロシア、8月にカナダ、11月にオーストリアで国際学会報告を行うほか、8月から9月にベルリンなどへの史料調査を予定していた。しかし、学会の開催は延期となり、史料調査もいつ実施できるか現時点では不明である。そのため、現状では、すでに収集済みの史料や、刊行史料集・新聞雑誌・回想録などの出版物の収集・分析を中心に進めるとともに、インターネットツールを用いて海外の研究者と頻繁に意見交換を行うことを計画している。また、海外の一部の文書館はインターネット上に史料を公開していることから、それらの史料も積極的に活用したい。そのうえで、海外への渡航が可能になり次第、史料調査を再開し、その成果を海外の査読雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)