2020 Fiscal Year Research-status Report
Gorbachev's CMEA Policy and the End of the Cold War
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19K13388
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤澤 潤 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90801100)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 冷戦史 / ソ連史 / コメコン |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では、令和2年度には、モスクワ、ベルリン、ワルシャワの文書館で、本研究課題の解明に必要な史料調査を本格的に進め、その成果の一端を国際学会で報告する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外出張が全て中止になったうえ、複数の国際学会が延期となったため、この当初計画はほとんど完全に変更せざるをえなくなった。 新規の史料調査は不可能となったが、幸いなことに、昨年度の調査の結果、ゴルバチョフのコメコン政策とコメコンの解散過程について、重要な史料を数多く収集できていたので、本年度はこれらの史料の検討をさらに進めると同時に、ゴルバチョフ期のソ連に関する各種史料集やドイツ連邦文書館のオンライン・データベースなどを集中的に分析した。その結果、1989年の「ベルリンの壁」崩壊後も、ほとんどの東欧諸国は何らかの形で域内経済協力体制を再構築することに前向きであり、コメコンの後継組織の設立に向けて加盟国の間で事実上の合意が成立していたことを実証的に確認した。これは、1989年の東欧体制転換後にコメコンは自然消滅したとする通説的解釈に修正を迫る重要な成果であることから、11月にロシア国立チェリャビンスク大学が開催したオンライン国際シンポジウム(Friendship of Convenience. COMECON Member-Countries Facing the Cold War)で報告したほか、論文「ソ連のコメコン改革構想とその挫折:1990―91年の域内交渉過程を中心に」として『史学雑誌』に投稿した(第130編第1号、2021年)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、当初計画の大部分は変更を余儀なくされた。まず、8-9月と2-3月に2度ほどモスクワ、ワルシャワ、ベルリンの文書館における史料調査を予定していたが、海外出張が事実上不可能となったことから、この計画は完全に断念せざるをえなくなった。また、8月にカナダのモントリオールで開催される予定だった国際中欧・東欧研究学会(ICCEES)の世界大会も、同じく新型コロナウィルス感染拡大の影響で2021年に延期となったことから、国際学会における報告の機会も減少した。このように、新型コロナウィルスの感染拡大をうけて、本研究の円滑な遂行は著しく困難になったが、幸いにも重要な史料集が刊行されたほか、ドイツ連邦文書館などが一部の史料をオンライン公開したため、これらの史料を閲覧・分析することで、ある程度研究を進めることができた。また、これらの史料を、昨年度の史料調査で収集した史料と照合することで、一定の研究成果をあげることができた。11月には、当初は開催が危ぶまれていた国際シンポジウムがオンラインで開催されたため、これに参加して研究をさらに進め、研究成果の一部を国内の査読雑誌に投稿することができた。 このように、史料調査は中止となり、重要な国際学会の一部も延期になるなど、本年度の研究の進捗状況は計画よりも遅れていると言わざるを得ない。しかしながら、このような状況でも、すでに収集済みの史料をもとにオンライン国際シンポジウムで報告を行い、その成果を査読論文として投稿することができた。以上より、新型コロナウィルスの感染拡大にもかかわらず、研究の遅れは最小限度に抑えることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、できる限り早急にモスクワ、ワルシャワ、ベルリンにおける史料収集を再開したいが、新型コロナウィルスをめぐる状況は著しく不透明であり、研究遂行のために必要不可欠な海外出張を行えるめどはたっていない。そのため、現状では、すでに収集済みの史料やオンラインデータベース、刊行史料集、新聞・雑誌、回想録など、日本にいながら入手可能な史料や文献の収集・分析を進めるとともに、Zoomなどのオンラインツールを活用して、国際学会等での報告を精力的に行っていきたい。そのうえで、海外への渡航が再び可能となり次第、文書館史料の調査・収集を再開し、その成果を海外の査読雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、研究費の大部分をモスクワ、ワルシャワ、ベルリンにおける史料調査や国際中欧・東欧研究学会(ICCEES)モントリオール大会への参加などの海外出張に充てる予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、すべての海外出張が中止となったため、102万3934円の次年度使用額が生じた。 令和3年度には、日本も含めた世界中でワクチン接種が拡大し、それに伴って順次国内外の出張も再開できるようになると想定されることから、令和2年度に中止を余儀なくされた史料調査を実施する予定である。その場合、次年度使用額並びに令和3年度の請求額の大部分は出張旅費ならびに関連文献・史料集購入費に充てられる。 もし万が一、令和3年度も海外出張が困難である場合は、関連する英独露語文献や史料集の収集に加えて、ソ連崩壊や冷戦の終焉に関するマイクロフィルム史料を一括購入する予定である。同時に、これまでの研究成果を複数の海外査読雑誌に投稿するほか、オンライン国際学会での報告を予定していることから、これらの論文・報告の英文添削として一定額を使用する。
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Research Products
(3 results)