2020 Fiscal Year Research-status Report
An empirical research on the relationship of the violence and the honour and its change in the urban society of the early modern Germany
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19K13391
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
齋藤 敬之 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD) (20822977)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 西洋史 / 近世ドイツ / ザクセン / ライプツィヒ / 犯罪史 / 暴力 / 決闘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、16-18世紀のドイツ・ザクセン選帝侯領の大学都市ライプツィヒを例に、当時の法規範のみならず暴力事件を扱う裁判の記録をも分析することで暴力の形態や経過における名誉の意義を明らかにすること、さらに名誉と結びついた暴力の特殊形態としての決闘の性質や公権力による禁止の論理、当事者と目撃者の認識の相違などを多角的に検討することを目指したものである。 初年度(2019年)の夏に約2週間ドイツに滞在しザクセン州立中央文書館ドレスデン館とライプツィヒ大学文書館にて史料収集を行い、前者では17世紀後半から18世紀前半にかけての決闘禁止令の草稿や刑事裁判の記録の一部も入手できたが、後者では、決闘禁止令に対応してライプツィヒ大学学生の決闘の実践に迫る裁判記録などの史料は想定ほどには所蔵されていなかったことを確認した。それゆえ、具体的事例に関する記録を収集するために初年度末あるいは2020年度前半にライプツィヒ市立文書館を訪問する予定であったが、いずれも実現できなかった。その後2020年度後半になって、同文書館とのコンタクトの結果、整理番号などを予め把握できていた17世紀後半のライプツィヒにおける決闘に関する史料数点をデジタル化された形で入手することができ、その際の手数料や複写費は本研究費より支出した。 2020年度当初より、コロナウィルス感染拡大によって史料収集に支障をきたすことが予想されたため、先行研究の整理や関連文献の収集、入手済みの一部史料の分析に当初の予定よりも多くの時間を割いた。中近世社会の暴力に関するドイツ犯罪史研究の動向を整理した論文は、2020年度前半に学術雑誌に投稿し、2021年2月に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述の通り、本研究の遅れの最大の原因は、ドイツの文書館に赴いて収集するべき史料の入手とその分析が十分に進んでいない点にある。初年度での史料調査の成果を踏まえ、また本研究の独自性を担保するためにも、ライプツィヒ市立文書館に所蔵されている17世紀から18世紀にかけての史料が不可欠であるとの認識を強くしているものの、その収集は円滑には進んでおらず、その目処を立てるのも困難な状況である。一部史料を入手できているが、本研究の目的の達成のための実証的な分析の基盤としては乏しいことは否めない状況である。 他方で、本研究開始時の計画よりはわずかに遅れたものの、中近世社会の暴力に関するドイツ犯罪史研究の動向を整理した論文を全国規模の学術雑誌で発表することで、本研究の意義や方向性を提示することができた。ただし同論文において、決闘の歴史に関しては近世の状況に関する研究の必要性を提起するにとどまっていたため、近世の決闘に焦点を絞った研究を(研究会での口頭報告や論文投稿の形で)発表することについては遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、2020年度後半に数点入手できたライプツィヒ市立文書館所蔵の17世紀後半の決闘関連史料の分析を進める。先述の通り、同文書館へのオンラインでの史料複写の注文と入手に際しては整理番号等の情報が必要なため、関連する文献を改めて確認したり同文書館の担当者とコンタクトを取ったりする形で情報収集に努める。この対応方法を進めることができれば、ドイツへの渡航と滞在が難しい現状でも、一定数の史料を入手することが期待できる。 本研究を構成する重要なテーマである近世ドイツの決闘については、いまだ十分な研究発表を行えていないため、できるだけ早急に実現するよう努める。この決闘研究の進展や史料状況の確認については、すでに知己を得ているドイツの近世史研究者(G・シュヴェアホフ氏やU・ルートヴィヒ氏)に改めて助言を求めることも検討している。
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Causes of Carryover |
2年目に当たる2020年度は、史料調査と収集のためにドイツ・ライプツィヒ長期間滞在することを計画していたが、コロナウィルス感染状況が好転せず、1年間を通じて渡航が実現しなかった。そのため、この海外渡航に関わる費用が未使用となった。2021年度は、ライプツィヒ市立文書館所蔵の史料をデジタル化された形で入手することを検討しており、そのための手数料や複写代に充当する予定である。また、もしドイツへの渡航の見込みが立った場合には現地での滞在期間を少なくとも3週間程度と予定よりも長く取るために、海外渡航費としても支出が見込まれる。
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