2021 Fiscal Year Research-status Report
An empirical research on the relationship of the violence and the honour and its change in the urban society of the early modern Germany
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19K13391
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
齋藤 敬之 南山大学, 外国語学部, 講師 (20822977)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近世ドイツ / ザクセン / ライプツィヒ / 犯罪史 / 暴力 / 決闘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、16-18世紀のドイツ・ザクセン選帝侯領の大学都市ライプツィヒを例に、当時の法規範のみならず暴力事件を扱う裁判の記録をも分析することで暴力の形態や経過における名誉の意義を明らかにすること、さらに名誉と結びついた暴力の特殊形態としての決闘の性質や公権力による禁止の論理、当事者と目撃者の認識の相違などを多角的に検討することを目指したものである。 前年度に引き続いて2021年度も、コロナウィルス感染の状況が好転しないことにより、ドイツの文書館(ザクセン州立中央文書館ドレスデン館とライプツィヒ市立文書館)での史料調査や収集を行うことはできなかった。そのため、主に関連文献の収集や入手済みの17世紀後半のザクセン選帝侯領における決闘に関する史料の分析に取り組んだ。本研究の目的にあるように、暴力事件を扱う刑事裁判の性質の検討は重要な課題の一つである。これに関しては、すでに2016年の論考で、被告の家族などが刑の免除や軽減のために裁判所に行う「請願」の社会的意義を分析していた。その中で十分に論じられなかった「請願」が判決や刑罰に与えた影響、つまり「請願」の法的意義については、2022年2月発行の論文集に収録される論考にて扱った。 同じく本研究における重要な課題である決闘の性質の検討に関しては、2020年に発表した17世紀後半のザクセン選帝侯領における決闘禁止令の翻訳を踏まえつつ、同時期に発生した決闘に関する裁判記録の分析に着手した。ライプツィヒの事例については分析が進んでいないものの、同じ選帝侯領内の都市フライベルクの事例を用いて、法規範と裁判での扱われ方を対比的に分析した論考を2021年度末までに学内紀要に投稿しており、2022年6月に発行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、所属先の変更とそれに伴う研究環境の変化、そしてコロナウィルス感染の状況が好転せず、前年度に引き続いてドイツの文書館(ザクセン州立中央文書館ドレスデン館とライプツィヒ市立文書館)での史料調査や収集が実現しなかったことにより、史料の入手や分析が十分には進捗しなかった。ライプツィヒ市立文書館に所蔵されている17世紀後半から18世紀にかけての史料が不可欠であるとの認識を強く持っているものの、その収集は円滑には進んでいない。一部史料を入手できているが、本研究の目的の達成のための実証的な分析の基盤として乏しいことは否めない状況である。 このような進捗の遅れは、本研究における重要な課題である決闘の性質の検討に関してとくに顕著に表れている。2021年度末までに投稿を終えた論考の中で、17世紀後半のザクセン選帝侯領において決闘が裁判でどのように扱われたかという点についてその一端を提示することができている。しかし他方で、決闘に関する研究動向を整理したうえで決闘を中近世社会の暴力という文脈に位置づける必要性を提示するような論考はいまだ発表する段階に及んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、すでに入手している17世紀後半のザクセン選帝侯領やライプツィヒにおける決闘に関する史料の分析を進める。また、研究文献を通じてライプツィヒ市立文書館に所蔵されている17世紀後半から18世紀前半にかけての決闘に関する史料の整理番号を新たに把握できたため、オンラインでの史料複写の注文と入手の準備を進める。この対応方法によって、ドイツへの渡航と滞在を見込めない現状でも、史料基盤を拡充することが期待される。 決闘に関する研究動向の整理についてはできるだけ早急に論考としてまとめる。すでに多くの研究文献を入手できているが、その中でもそれぞれ2012年と2016年に発表された中近世ドイツの決闘に関する包括的な研究プロジェクトの成果に注目し、決闘研究や暴力研究に関する新たな論点を提示したい。
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Causes of Carryover |
3年目に当たる2021年度は、前年度に実施できなかった史料調査と収集のためにドイツ・ライプツィヒに滞在することを計画していたが、コロナウィルス感染の状況が好転せず、再度渡航が実現しなかった。そのため、この海外渡航に関わる費用が未使用となった。2022年度は、ライプツィヒ市立文書館所蔵の史料をデジタル化された形で入手することを準備しており、そのための手数料や複写代に充当する予定である。また、もしドイツへの渡航の見込みが立った場合には現地で2週間程度の滞在を予定しているため、海外渡航費の支出も見込まれる。
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