2021 Fiscal Year Research-status Report
古代アンデスの大型家畜利用の変遷とその社会的背景に関する生物考古学研究
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19K13398
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
瀧上 舞 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (50720942)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クントゥル・ワシ / アンデス / 同位体 / パコパンパ / 食性推定 / 出身地推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は2020年度に進める予定であった試料の分析を行った。2019年度に試料採取を行った以下の遺跡の同位体分析を行った。①ペルー北部高地クントゥル・ワシ遺跡、②同北部高地パコパンパ遺跡。それぞれの進捗について記載する。 ①クントゥル・ワシ遺跡から出土した古獣骨を用いて炭素・窒素同位体比分析による食性推定およびストロンチウム同位体比分析による出身地推定を行った。その結果、アンデス形成期後期(800-250 BC)にトウモロコシを餌とする飼育が広がったこと、また遺跡には遠隔地からの飼育個体が連れてこられていたことなど、広くラクダ科動物飼育が普及したことを明らかにした。クントゥル・ワシ遺跡でのラクダ科動物の飼育方法は、パコパンパ遺跡での飼育方法と異なっており、形成期中期から後期にかけて、複数のラクダ科動物飼育集団が北部高地に存在しており、それぞれの集団が関係性をもつ神殿が異なっていたことが示された。これらの成果は第11回同位体環境学シンポジウムで発表し、Senri Ethnological Studies (SES)への論文投稿を行った。 ②パコパンパ遺跡の人骨のストロンチウム同位体比分析から、金属製品の副葬品を伴う特別な個体がいずれも遺跡周辺の出身である可能性が示された。これは外部から来た人を特別視したのではなく、共同体内部から権力が萌芽し始めた社会的背景を示唆していると考えられる。ラクダ科動物の飼育の導入には高地の牧民の関与が考えられるが、少なくとも埋葬されていた人々は遺跡周辺の出身であると考えられ、標高の低い地域でのラクダ科動物飼育の受容は在地のヒトが主体となっていたと推測される。この結果について現在報告書をまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の蔓延により、実験施設の利用が滞り、分析のために調整した試料の廃棄と再調整が必要になったことなど、2020年度にほとんど分析ができなかった状況は昨年度の実績報告書に記した通りである。2021年度は、本来2020年度に分析予定だった試料を分析し、成果報告を行った。2021年度の1年間の中での進捗は順調であったが、研究計画全体としては約1年分の進捗遅れが生じている。2022年度は、元々2021年度に分析する予定だった試料の分析と報告書の作成を行う予定である。 なお、2021年度は現地での試料採取は渡航不可のため実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、クントゥル・ワシ遺跡の未分析試料についてストロンチウム同位体比分析を進め、ラクダ科動物の成長に伴う居住地の変化の推定(生活史の調査)を行う。また、2019年にサンプリングしたコトシュ遺跡の獣骨の炭素・窒素・ストロンチウム同位体比分析を実施し、コトシュ遺跡で利用された動物の飼育実態について調査を行う。いずれもすでに日本に試料があり、国内の移動ももう制限はないため、問題なく遂行できる予定である。 これらの結果については、2022年12月の古代アメリカ学会や2023年4月のSociety of American Archaeologyでの発表を検討している。 また、2021年度に分析を行ったパコパンパ遺跡の分析結果の報告書もまとめていく。 2022年度の現地サンプリングについては世界情勢を見ながら判断をするが、実施できた場合には、インガタンボ遺跡での試料採取を行う予定である。 試料採取状況や報告書の進捗状況によっては、補助事業期間を2023年度まで延長することも視野にいれている。
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Causes of Carryover |
備品を購入予定で12月に発注を行ったが、世界情勢の不安定化や半導体不足により3月31日までの納品が難しくなった。そのため翌年度への繰り越しとした。2022年度には納品予定であるため、予定通り使用できると考えている。 また、2021年度は現地調査を実施できなかったため、想定していた旅費の使用が変更となった。2022年度は現地調査に行く予定で計画を立てている。
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