2020 Fiscal Year Research-status Report
Social Structure of the Indus Valley Civilization: Studies in the Relationship between Ancient Cities and Villages through Modes of Production and Modes of Exchange
Project/Area Number |
19K13402
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小茄子川 歩 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員准教授 (20808779)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インダス文明 / 社会構造 / 都市と農村 / 中心と周辺 / 生産様式と交換様式 / 南アジア基層社会経済文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インダス文明の社会構造の一側面を解明することである。その方法は、発掘調査をはじめ、第一に考古学的手法に基づく。具体的には以下のような研究目的がある。 ①:当文明社会の中心である都市(現段階では都市的集落も含めておく)と周辺であるその他の集落(主に農村)から出土した物質文化をマクロ・ミクロレベルから考古学的に検討し、物質文化にみられる「統一性」と「多様性」を把握する。②:都市と農村における生産様式と交換様式のあり方を、①の研究成果に基づき検討し、明らかにする。その際、南アジア前近代史研究や人類学的研究の成果も積極的に参照する。③:①と②の研究成果に基づき、都市と農村の実態と両者の関係性を明らかにする。 本研究では上記①~③の研究目的を完遂することで、物質文化にみられる「統一性」と「多様性」の相互の関係と歴史的意義を明らかにし、当文明の社会構造の一側面を解明する。 当該年度は、研究目的①・②を達成するために、前年度に引き続き、周辺に位置する大規模集落であるラキー・ガリーの発掘調査報告書の作成作業を行いつつ、当遺跡出土の遺物・遺構を詳細に検討した。くわえてその成果を、既に公表されている都市遺跡出土の遺物・遺構と比較検討した。この研究により中心である都市と周辺に位置する大規模集落における、物質文化にみられる「統一性」と「多様性」の実態とマクロレベルでの異同の一側面が明らかとなりつつある。またラキー・ガリー出土のインダス式印章について、前年度に引き続き、走査型電子顕微鏡を用いた観察を実施し、製作技術というミクロレベルでの検討を行った。この研究により、周辺でみられる「統一性」としてのハラッパー文化の実態の一側面が明らかとなりつつある。 当該年度に実施した研究の意義、重要性は、研究目的①・②の完遂に向けた有意義かつ実証的な基礎データを蓄積できたことにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、今年度予定していたインド調査、及び2020年10月15日に米国・ウィスコンシンにて開催予定であった国際シンポジム”Seals and Sealings of South Asia: Indus to Early Historic Period”(Jonathan Mark Kenoyer教授(ウィスコンシン大学人類学部)と当科学研究費助成事業の共催)を延期とせざるを得なかった。それにともない、令和2年度未使用額が発生している。 いっぽう国内で実施できる調査研究は順調に進め、さらに日本南アジア学会第 33 回全国大会におけるパネル報告「南アジア前近代史の長期的展開をめぐって:前4千年紀後半から後2千年紀半ば」(2020年10月3日)、及びシンポジウム「社会進化の比較考古学」(2020年10月10-11日)を主催した(いずれもオンライン開催)。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、現在においてもインド渡航の見通しはたっていない。したがって当面は、国内で実施可能な研究として、ラキー・ガリーの発掘調査報告書の作成、当遺跡及び他遺跡出土の遺物・遺構の詳細な検討・比較、くわえてインダス式印章の分析を継続する。印章分析については、製作実験を継続し、走査型電子顕微鏡を用いた観察及び3D解析に基づく、製作技術というミクロレベルでの詳細な検討を本格的に開始する。 新型コロナウイルス感染症の拡大が収まるようであれば、令和2年度未使用額も使用するかたちで、研究目的の完遂に向けた現地調査を実施する。ラキー・ガリーにおける発掘調査の継続は確定しているので、当遺跡における調査を継続しつつ、当遺跡の周辺に存在する農村遺跡のサーベイ・試掘調査を実施する予定である。またこれらの調査と併行して、現地における資料調査も行う。 研究成果発表としては、延期となったシンポジウム”Seals and Sealings of South Asia: Indus to Early Historic Period”をオンライン開催が決まった49th Annual Conference on South Asia(October 20-24, 2021)において開催し、さらにシンポジウム「社会進化の比較考古学」の成果を『別冊 季刊考古学』(雄山閣)のシリーズから刊行する(2021年10月25日刊行予定)。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、今年度予定していたインド調査、及び2020年10月15日に米国・ウィスコンシンにて開催予定であった国際シンポジム”Seals and Sealings of South Asia: Indus to Early Historic Period”(Jonathan Mark Kenoyer教授(ウィスコンシン大学人類学部)と当科学研究費助成事業の共催)を延期とせざるを得なかった。それにともない、令和2年度未使用額が発生した。 新型コロナウイルス感染症の拡大が収まるようであれば、令和2年度未使用額も使用するかたちで、研究目的の完遂に向けた現地調査を実施する。また延期となった上記国際シンポジウムをオンライン開催が決まった49th Annual Conference on South Asia(October 20-24, 2021)において開催する。
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