2019 Fiscal Year Research-status Report
A Multiple Study of Bronze Casting and Distribution in Eastern Zhou Period
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19K13411
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Research Institution | Sen-oku Hakuko Kan |
Principal Investigator |
山本 尭 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 学芸員 (90821108)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 春秋戦国時代 / 青銅器 / 生産体制 / 鋳造技術 / 鋳造実験 / 金文 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究計画1年目であるため、春秋戦国時代青銅器の生産と流通を明らかとするための基礎的検討として、以下の3方面の分析を行った。 まず第一に中国で発見されているなかで最大規模の鋳銅遺跡である侯馬鋳銅遺跡群を対象として、出土鋳造関連遺物を実見・観察し、その鋳造技術上の特徴を明らかとすること。侯馬で生産された製品は、広く華北地域全体に流通しているため、その技術上の特徴を捉えることができれば、製品の具体的な流通過程の詳細な把握が可能となることが期待される。そのため、今年度は山西省博物院、山西省青銅器博物館、山西省考古研究所侯馬工作站において出土青銅器、さらには鋳型資料の実見・観察を行った。その結果、侯馬産の青銅器の施紋技術を中心として、製作技術に関する基礎的な知見を得ることができた。鋳型の設計、鋳型同士の組み合わせの方法など未解明の点が多く残されているが、具体的な足がかりを得ることができ、今後も継続的に実見調査を行うことで、製作技術をかなり具体的に示すことが可能となることが期待される。 第二に、上述の実見調査で得られた製作技術に関する仮説を、鋳造実験によって検証すること。福岡県芦屋町に位置する芦屋釜の里との研究協力によって、青銅器の鋳造実験を継続的に行っており、春秋戦国時代青銅器の復元鋳造を目指して、施紋技術を中心に鋳型の復元製作を行い、肉眼観察で得られた所見の妥当性を別の観点から検証を試みた。 第三に、第二の分析から派生する問題として、今年度は青銅器に鋳込まれた銘文、いわゆる金文の復元鋳造も行い、長らく未解明であったその鋳造技術に関する有力な仮説を得ることができた。 以上の研究成果は学会発表、論文執筆等の形で公表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は2019年9月に中国現地での調査を行うことができたが、その後に発生した新型コロナウイルスの世界的流行の影響で、現地調査の中止を余儀なくされた。そのため、鋳型資料の実見による鋳造技術の把握という方向の分析は頓挫せざるを得なくなっている。ただし、同時に行っていた鋳造実験によって、肉眼観察で得られた所見に対する有効な検証を行うことができ、実製作を通じて鋳造技術に関する新たな知見も得られているうえ、金文の鋳造技術に関する有力な仮説という、予期せぬ副産物も生まれている。現地調査の中止は研究遂行のうえで大きな痛手となっているが、総合的に見れば、研究の進展はそれほど大きく遅れているわけではないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
少なくとも今後1年間は中国での現地調査の実施が困難であると予想されるなかで、研究全体の推進方策も少なからず変更を余儀なくされていると言わざるを得ない。当初予定していた鋳型資料の実見調査に代わるものとして、以下の2方向の分析を推進していく。 第一に過去に出土した青銅器のデータベースの作成を本格化させ、それらに対する考古学的な分析によって、紋様系統の整理、さらにはこれまで立ち遅れている編年研究を推進していく。これらはすでに刊行されている報告書、図録等を利用することによって進めることができるため、現地調査に依らずに推進可能である。 第二に鋳造実験による製作技術に関する仮説の検証、あらたな仮説の提起を行う。今年度の調査結果によって、侯馬の青銅器に関する製作技術上の基礎的な知見は得られているため、それをベースとして、復元製作・鋳造を行っていくことは十分可能である。またその過程において、新たな仮説の発見が行われることも期待される。 今後は当面の間、以上の2方向の分析にシフトしていく必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
当初、当該年度内にてもう一度中国での現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス流行の影響により実施不可能となり、代替として国内での資料調査の実施に切り替えた。その結果、使用額に差が生じている。ただし、その額はさほど大きなものではないため、次年度以降の使用計画に大きな変更を要するものではないと認識している。
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Research Products
(2 results)