2021 Fiscal Year Research-status Report
A Multiple Study of Bronze Casting and Distribution in Eastern Zhou Period
Project/Area Number |
19K13411
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Research Institution | Sen-oku Hakuko Kan |
Principal Investigator |
山本 尭 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 学芸員 (90821108)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 春秋戦国時代 / 青銅器 / 鋳造技術 / 生産体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
春秋戦国時代全体を通じて最も豊富に出土青銅器資料が得られている華中地域(河南省南部、湖北省、湖南省、江西省)を対象として、青銅彝器の編年体系を再構築し、これまでの編年研究においてあまり注目されてこなかった紋様の詳細な檢討によって、青銅彝器の生産・流通体制の変遷を分析した。その結果、春秋末から戦国前期にかけて、青銅彝器の生産・流通体制は大きな変革を迎え、広範かつ画一的な生産と流通のあり方が出現していたことが明らかとなった。 華中地域は春秋戦国時代の大国のひとつであった楚の領域とほぼ重なるため、上述の分析によって得られた結論が、楚国の政権構造の変遷とも密接に関わっていることを、考古資料のみならず文献史料や金文などの出土史料もあわせて論じた。様々な資料を総合的に検討することにより、これまで文献史学では様相不明な点が多いとされてきた春秋末から戦国前期において、楚国の地方支配、政権の担い手が進展していき、前4世紀半ばの戦国中期の段階では中央集権的支配体制がある程度確立していた可能性の高いことが判明した。 同時期の黄河流域、青銅彝器生産の中心地であった山西省侯馬市からは大量の鋳型資料が出土しているが、そこにあらわされた紋様と特徴を同じくする青銅器が、遠く離れた遼寧省西部から近年数多く出土している。それらの年代観を考古学的分析から明らかとし、さらには同時期の中原地域の様相を文献史料、出土史料も踏まえて分析したうえで、侯馬から遼寧へと青銅器が流通した背景には、中原地域の政治動向や、青銅器の贈与が外交上重要視されるといった社会的背景があったことを指摘、侯馬の工房を運営管理する晋国の政治的意図が多分に反映された現象であった可能性を論じた。 以上の研究成果によって、春秋戦国時代における青銅器の生産・流通が、きわめて重要な社会的意義を有していたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響により、海外渡航が制限されるなか、当初予定していた中国現地における調査の実施が依然として難しい状況にあり、研究の遂行が十全の状態でおこなえていないのが現状といえる。しかし、これまで継続的におこなってきた調査に加え、出土資料の集成にもとづき、上記の研究成果も挙げているため、基本的には順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度にあたるため、報告書の作成に向けて研究の総仕上げをおこなっていく。具体的には、今年度の研究成果によって華中地域の青銅彝器の編年体系を再構築することができたが、中原地域に関してはいまだ十分におこなえておらず、中国全土を網羅した編年体系を示す必要がある。また鋳造技術上の特徴に関しては、鋳造実験にもとづく検証を継続しており、その成果をまとめていくことが不可欠となる。以上に示した方向性は、海外渡航の制限があるなかでも基本的には実施可能と考えられるため、着実に推進し、当初掲げた目的の完成を目指していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度も引き続きコロナ禍による海外渡航の制限により、中国現地での調査旅費を見込んだ分の金額が使用できなかった。次年度では報告書作成、さらにはそれの頒布を計画しているため、ページ数増加による内容の充実、印刷数の増加によって研究成果を広く周知するために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)