2023 Fiscal Year Annual Research Report
Basic study of masonry techniques used for the construction of stone walls of castles
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19K13412
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
坂本 俊 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40808903)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 城郭石垣 / 採石・加工技術 / 矢穴技法 / 石工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本全国で石垣を有する城郭遺跡を集成したデータベースの作成を行い、石垣と石丁場を対象として各地で現地調査を実施した。 石垣遺構が残存する城郭遺跡の現地調査は、中国地方、東北地方、関東・甲信越地方、九州地方において51か所で行い、また北陸地方では戦国期の城郭石垣と比較をするため白山平泉寺(福井県勝山市)や一乗谷朝倉氏遺跡(福井県福井市)、金剛輪寺(滋賀県愛知郡愛荘町)での踏査も敢行した。その結果、城郭石垣を理解するための視点として間詰石の重要性を再認識した。そして、近世城郭や織豊系城郭の石垣が成立するまでに複雑な技術交流が行われた可能性があることが明らかになってきた。 石丁場の現地調査は、和泉砂岩を産出する大阪府阪南市で近年新たに発見された遺跡を踏査した。踏査により、矢穴石やこっぱ石、端石の集積、石臼の未製品などが散在していることを確認した。矢穴形態からは、近世前期頃から採石活動を行っていた様子がうかがえた。徳川大坂城の石垣普請では淡輪などから栗石が持ち込まれていることが史料に見えるため、石垣に用いる石材には適さない砂岩であっても石垣普請に関与していた可能性を示唆するものであった。 報告書の刊行を目指したが、視点が多岐にわたるため詳細な分析を論文や口頭発表によって研究成果を公開する方法をとることとした。また、次年度開催する第20回石造物研究会「採石・加工技術研究の現在地-これからの課題と石造物研究との接点を目指して-」の主担当として本研究成果を含めた研究報告と討論での司会を行う予定である。 本研究の成果で、石工単位での技術的特徴を解明する端緒を得たことにより、文献史料の記述がほとんど見られない中近世の石工の具体的様相を考古学的に明らかにすることが可能となった。また、将来的に文化財修理の場でも見た目だけでなく技術的根拠をもって実施できるようになると考える。
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